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木村和平 「石と桃」

この展示を見てから思い出したことがある。
朝、目が覚めると視界に映る景色、つまり天井が渦のように回っている。
布団の中でじーっと天井を見つめていると、それは少しずつ元の位置に戻ってくるのだ。

眠りの世界から現実へ移る束の間の時間。

はじめに住んでいた家の天井の記憶しかないので、おそらく小学生になる前の話だ。
毎日ではないが、当時そんな目覚めを何度か繰り返した。
自分にとっては当たり前だったので特に不思議に思わず、誰に話すこともなく、いつの間にか忘れてしまっていた。

木村和平「石と桃」

1点ずつ、近寄ったり離れたりしながらゆっくり見て、1周したところで、ふとソワソワする。

音のない部屋に1人。
木村和平の写真と自分だけ。

「写真」を見るというよりは「空間」にいる。
それは、思いもよらず人の感覚に迷い込んでしまったような気持ちになるもので、

その場で説明の書かれたフライヤーを読み理由がわかる。

「反射的に、“不思議の国のアリス症候群”についての作品を作りたいと思った。」と、幼少期から抱えているその症状を視覚化した展示だった。

自分が持ち合わせて無い「その人」の感覚に、
どう近寄っていいか分からない。

居心地が悪いわけではなく
同じ体温なはずなのに
一緒にいるのに
こっちを向いてない感じ
でも気になる

外の暖かい日差しが見える小さな窓だけが
自分の知っている世界に思えた。

Rollは「こんなところに?」と、おそるおそる足を進めた先にある。
観終わってみれば、ギャラリーに辿り着くところから始まっているような展示だった。

展示の様子を撮らせてもらったが、会場の写真を観ただけでは全く分からないと思うので載せずにおく。

何度か行ったら
もう少し近づけるのだろうか。

木村和平「石と桃」
2023.3.31ー2023.4.22
Roll
東京都新宿区揚場町2-12 セントラルコーポラス 105号室  https://yf-vg.com/roll.html

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