アークナイツ・ロドス麻雀部
ロドスでは、炎国出身のオペレーターは少なくなく休憩室には麻雀卓が幾つか置かれている。
今日はその一卓を見てみよう。
着席するのはマウンテン、ケルシー、ホシグマ、そしてニェンである。
和気藹々と麻雀を打っているように見えたが、マウンテンが凄い形相で上家のニェンを掴みかかった。
「イカサマやってんじゃねぇ!」
ニェンは湯気まで出そうなハードパンチを喰らい、部屋の対面にまで吹っ飛ばされた。そして、そこでぐったりして動きが止まってしまった。
「場が荒れましたね。私がトップ目ですし仕切り直ししましょう」
マウンテンの紳士ムーブにより、牌は全自動卓に吸い込まれる。
スッと出てくる新しい山。
すっ飛んだニェンを見て「ひゃぁ」と言葉を失っているWがマウンテンの目に留まる。
「Wさん一緒にやりませんか?」
「W。君が、ここで面子に入ることは、君のためにもなるし、ひいてはロドスの発展にも資するだろう」
そんなことを言われてWは「えー、私、結構強いわよ。泣き言言っても知らないからねぇ」と言って着席した。
東からマウンテン、ケルシー、ホシグマ、Wで始まる。
東一局。
Wの手は早かった。配牌時点で一向聴。順子がいい感じに並んでいる。
三巡目に4萬を切っての69萬のリーチである。これは和了れる!
Wは自信満々だ。
このとき困ったのはケルシーである。彼女はこの時点で暗刻を三つ抱えていて孤立牌が9萬か東なのである。
東は生牌だ。Wは兎も角二人に刺さるのは後々痛い目に遭いそうだ。一方Wは三巡目リーチ。直撃を喰らったところで打点が高いということはないだろう。危険牌を承知で9萬を打牌した。
「はーい、ろーん!」
リーチ一発ピンフ、3900点だ。
ケルシーは不機嫌な顔をしながらも、五千点支払い、千点棒と百点棒を受け取った。
Wは得意気だ。
「私ぐらいになると、これぐらい朝飯前だからね。どう? ケルシー?」
ケルシーは黙っている。
東二局。
Wの配牌は悪い。四向聴から苦しい戦いをしている。一歩でも前へ出たい。
そう言う思いで打牌していく。
一方、対面のケルシーは澄ました顔だ。
「いけ好かない。もう一発当ててやろうかしら」
ダブチは何だかんだで九巡目には一向聴まで持って来ていた。
皆、渋い顔をしている。
「これ、ひょっとしていけるかも?」
Wは見事テンパった。
打点としては高め満貫である。ダマテンでいける!
Wには河は読めない。
ケルシーの河は不穏だ。四枚目までは端牌を切っていたが、五巡目ぐらいから真ん中の牌を切り始める。七巡目でドラそば、八巡目で赤牌が切られている。十巡目に一枚切れの發を切っている。
Wとしては、八巡目までは「あぁ、それ欲しかったな」と言う気持ちで過ごしていた。それが九巡目でテンパったのだ。
ツモったのは3索。
ケルシーは赤5索切ってる。多分大丈夫だ。
Wは3索を切った。
「ロン。トイトイ三暗刻チンイツ」
Wは固まっている。
「聞こえなかったか? 24000点だ」
Wは東二局で4900点となった。
その後、局は一進一退だった。
マウンテンが三着という状態で南一局。
マウンテンは親の満貫を和了り急上昇。トップ目に躍り出た。
二本場となって、マウンテンとケルシーホシグマは、その差が5000点以内。
マウンテンとしては、残り1000点のWを飛ばせば勝ち確定である。
つまり、三飜の手でツモれば確定で勝てるわけである。
しかし場は重かった。
十二巡目。ホシグマが動いた。
「ツモ! ツモのみ」
300-500である。
Wは「こんなゴミ手で和了って大丈夫?」とWを煽るが、ケルシーにとっては僥倖であり、ホシグマにとっては首の皮一枚繋がったのである。
南二局。ケルシーが親である。
チャンスはケルシーに回ってきた。
ここで一発満貫和了ればケルシーがトップだ。
しかし、ホシグマの方が動きが速かった。
チンイツイッツーイーペーコードラドラをツモってあっさり終了してしまう。
三倍満である。当然Wは飛んだ。
「Wさん。では、罰ゲームを受けてもらいましょう」
Wは三人の雀士に囲まれる。
ニェンを含めた四人が何を決めていたのかは、敢えて言葉にしないが、Wが密かに泣いていたのは可哀想だから誰も触れないでおいてあげよう。
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