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「反対のための反対」にしない為に

 それ、反対のための反対になってませんか? って話。

 人類というモノが誕生してから、目的と手段の顛倒なんてのは多いし、争い事を続けた結果、そもそも何が原因で争っていたかなんて事まで、実はどうでもいいだなんて事もある。

 いずれにせよ、世間は複雑で、単純な二項対立では説明が付かないことが多い。

 そして、その複雑さが、人間の知能を超えたときに、物事を安直に考える人達が現れるのだ。

 二つの国が争っていて、その国の中でそれぞれに派閥が二つあるだなんて時に、本来派閥の話をすべきなのに、国民性とか指導者の性格がと言うのを"問題の全て"と錯覚してしまうような人は多い。

 或いは、自分自身が愛国者なのだとか、リベラルなのだと言う意識を持っていると、その文脈でしか物事を理解出来なくなることが多い。
 自分が愛国者だと思えば、外国人の不埒な行為に腹を立て、同じ事を外国でやっている日本人には目を向けない。
 自分がリベラルだと思えば、ロシアは支持すべきであり、戦争をなんとか肯定する理屈を無理矢理こさえたりする。

 本来は、不埒な人間は誰であれ叱責されるべきだし、戦争を起こした人間の責任はリベラルだのコンサバとは無関係なはずだ。

 人間は社会性の生き物なので、正しくあると言うよりも、自分の所属するグループの中での自分の力の誇示の方が大事になる。
 だからこそ、そのグループの理屈が優先される。

 その結果、「反対行動を取る」と言うのが目的になるのだ。
 相手が反対すべき存在だと分かれば、如何なる善行であれ疑い、そして反対の声を上げるのだ。

 例の段ボール授乳室なんかが特にそうだろう。
 役所や企業の行動にNOを突き付けることで発言権を増してきた一派にとって、アレが役に立つのかどうかと言うのは、本質的に興味のないことで、ただただ反対のための反対だったのだ。
 お陰で、育児を行う母親が割を食ったわけだけど。

 そして、世の中は往々にして単純でもないし、二つのウチのどちらかと言う事もないので、簡単にこういう抗議がバグるのだ。

 例えば最初に火付け役をした人間が、実は信者から金を取るだけの詐欺師だったとか、シンプルに冤罪だったとか、そんなことに対応出来なくなる。

 反AI運動も、どちらかと言えば「絵を描く自身の承認」的な事に先鋭化した思想だから、AIを使う(自分に関係のない)イラストレーターの権利さえも踏みにじろうする事もある。
 AIを用いた二次創作に対する権利とか、AIを用いた架空の未成年を描く事に対する権利とか、著作権侵害の被申告罪化とか……それがいずれ自分に降りかかってくると言うことを全く理解出来ないのだ。
 それはやはり、AIか反AIかでしか世の中を判断出来ないし、「AI反対」と言う行動のみが唯一の原理だからなのだろう。

 こんなのは、小学校の学級会と同じで、「○○君はおかしいとおもいます」の晒し上げから一ミリも進歩してない証拠なのだ。

 とは言え、複雑なものを複雑なまま捉えるというのは、それなりの素養というか訓練は必要なのかもしれない。
 そして、それを学ぶ機会が平等に存在する訳じゃないし、もっと言えば、ご立派な環境で育ってきた筈の人も、養えていないこともあるのだ。

 だからこそ、世の中はより複雑なのかもしれない。

 完全に全てを知ることは出来ないけれど、知らないという事実を知るために、沢山のニュース、それも様々な角度のニュースを知るべきだし、その合理性とか真実性を疑うべきだろう。
 そして、それを語る人間が本当の専門家なのか、過去にどのような発言をしてきたか? その辺りも頭に入れる必要がある。

 何かを疑うことは大切だが、"疑うことが目的"になると、それも違うだろう。
 自分の頭で考えると行って、カルトティックな言説には全く疑いを向けないなんて人もいる。

 本来疑うと言うのは、それらも全て疑うと言う行為の筈だ。

 それが出来ないならば、取り敢えず発言をする前に、他のニュースもニュートラルな姿勢で読んだ方がいいだろう。

 まぁ、難しく、そしてやっぱり間違えがちなのが人間だけれども。


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