ヒトマイクロバイオーム：私たちの体を住処とする39兆個の微生物について知っておくべきことすべて
私たちの体には何千もの微生物が共存しており、想像以上に奇妙な形で私たちの行動に影響を与えています。
ムンキート・ルーイ
公開日: 2020年7月14日午後1時53分
あなたの体には細菌や真菌がうようよしています。でも心配しないでください。それらのほとんどは、あなたの生命を維持するために存在しています。人間の微生物叢の素晴らしい世界へようこそ。
マイクロバイオームとは何ですか?
人間の体には約 30 兆個の細胞がありますが、私たちのマイクロバイオームは、私たちの体表や体内に生息する細菌、ウイルス、真菌など、推定 39 兆個の微生物細胞から構成されています。
これらの微生物はサイズが小さいため、私たちの体重の約1〜3％を占めるだけですが、これはマイクロバイオームの途方もない力と可能性を物語っています。
私たちの細胞にはそれぞれ約 20,000 ～ 25,000 個の遺伝子がありますが、ヒトのマイクロバイオームにはその 500 倍以上の遺伝子が含まれている可能性があります。
さらに、微生物が急速に進化し、遺伝子を交換し、増殖し、変化する状況に適応する能力は、微生物、そしてその宿主である私たちに、私たちが今ようやく理解し始めたばかりの驚くべき能力を与えています。
マイクロバイオームはどこにありますか?
人体は多様な環境を提供しており、微生物はそれらすべての環境で生息することができます。
体の各部分は、異なる大陸と気候を持つ惑星のように、異なるタイプの生態系であり、その住民はそれぞれの場所の特性に適応しています。
私たちの顔や手は乾燥していて冷たく、風雨にさらされているだけでなく、何かに触れたり近づいたりするたびに、絶えず微生物が侵入してきます。
脇の下のような隅っこは、湿気があり、暖かく、暗いため、細菌が繁殖しやすい場所です。
平均的な人間の足はさらに優れており、1平方センチメートルあたり600個の汗腺があり、脇の下よりも数百個多く、塩分、ブドウ糖、ビタミン、アミノ酸のスープを分泌し、細菌のコロニーに最適な栄養を提供します。
そして、腸内微生物叢には何千もの在来細菌が私たちと共存しています。それらは、胃腸を流れる激しい川のような暗闇、高酸性、低酸素という過酷な環境を生き抜いています。
これらの微生物はどこから来るのでしょうか?
あなたのマイクロバイオームの4分の3は、母親にまで遡ることができます。子宮は無菌の場所であり、微生物は存在しません（少なくとも現時点ではそう考えられています）。しかし、産道を通って外に出ると、私たちは膣の微生物に浸かることになります。
この文字通りの細菌洗礼は、人生の健康なスタートに不可欠である可能性がある。帝王切開で生まれた赤ちゃんは、後年、アレルギー、喘息、セリアック病、肥満を発症する可能性が高くなるのだ。
私たちは食物1グラムあたり約100万個の微生物を摂取しており、私たちの食生活は腸内微生物叢でどの種が繁栄するかに直接影響を及ぼします。例えば、肉食から菜食に食生活を変えると、腸内細菌もそれに応じて変化します。
同様に、私たちは人生の中で、ある環境から別の環境へと移動しながら、さまざまな人々や場所の微生物にさらされます。
どの家にも、そこに住む人々から受け継いだ独特の微生物叢があります。新しい家に引っ越してからわずか 24 時間で、微生物が定着します。
そして、ペットを飼っている家庭で育った人は、はるかに多様な微生物にさらされますが、それは悪いことではありません。
科学者たちは、花粉症など現代の一般的なアレルギーの多くは、幼少期にそのような微生物と共存することを学ばなかった免疫システムによって引き起こされるのではないかと疑っている。
私たちのマイクロバイオームは何をしますか?
たくさんあります。腸内微生物叢は脂肪の蓄積を制御し、栄養素の吸収、毒素の分解、血管の形成に関与するヒト細胞の遺伝子の活性化を助けます。
これらの有益な微生物は、腸と皮膚の内壁を補充し、損傷した細胞や死滅した細胞を新しい細胞と置き換えます。同様に、病気を予防する役割も重要です。
体内に生息する微生物は侵入してきた微生物と競争し、侵入してきた微生物が定着するのを防ぎます。私たちは免疫防御システムがまだ部分的にしか形成されていない状態で生まれます。
体を形成するのは微生物との相互作用であり、生成される免疫細胞のクラスや、免疫細胞を作り、貯蔵する臓器の発達に影響を与えます。
エド・ヨングは著書『I Contain Multitudes』の中で、「免疫システムは、無害な共生生物と脅威となる病原体とを区別するようには生まれつきできていない。その区別を明確にするのは微生物である」と述べている。
人間のマイクロバイオームは、私たちの匂いにも影響を与えます。微生物の種類によって、汗がタマネギの匂いに、テストステロンが尿の悪臭に変化し、それが私たちの味方や敵に対する強力なシグナルとして作用するのです。
これらの匂いは非常に個人的なものです。研究によれば、汗をかいたTシャツだけで人を識別できるそうです。
科学者たちはまた、私たちのマイクロバイオームが時差ぼけの原因として大きな役割を果たしている可能性があると考えています。
睡眠パターンの変化により、腸内細菌のリズムが私たち自身の行動と同期しなくなり、異なる菌種が不適切な時間に活動することになります。
体とマイクロバイオームについて詳しく読む:
実際、睡眠は微生物が私たちの気分や行動に影響を与える多くの方法のうちの1つにすぎません。最後に、私たちのマイクロバイオームは「タナトマイクロバイオーム」と呼ばれるもので私たちを処分するのに役立ちます。私たちが死ぬと、免疫システムは機能しなくなり、微生物は自由に拡散します。
腸内細菌は腸とその周囲の組織を内側から外側へと消化し始めます。最終的には毛細血管やリンパ節に侵入し、損傷した細胞から漏れ出る化学物質のカクテルを餌として肝臓、脾臓、心臓、脳へと広がります。
マイクロバイオームは本当に行動に影響を与えるのでしょうか?
マイクロバイオームが病気や行動の変化の原因なのか、それとも病気や行動がマイクロバイオームの原因なのかを判断するのは困難です。
専門家たちは、腸内細菌が産生するホルモンや分子を通じて脳にどのような影響を与えるかを解明しようとしているが、それがどれほど重要であるかは誰も知らない。
神経疾患の新たな治療法を熱望する製薬会社は、研究に資金を投入している。
微生物は互いに干渉し合うのでしょうか?
異なる微生物種間のネットワークと相互作用は信じられないほど複雑です。
次に、外的要因がどのように作用するかという問題があります。たとえば、フィルミクテス属とバクテロイデス属という 2 つの細菌群のバランスが肥満に影響を与えることはわかっていますが、その関連性はまだ明確ではなく、一貫性もないため、私たちがどのように影響を与えるかはわかりません。
たとえ潜在的な治療法が見つかったとしても、体がそれを受け入れるかどうかは分かりません。
健康なマイクロバイオームを作るものは何でしょうか?
マイクロバイオームが乱れているかどうかは、どうすればわかるのでしょうか? 特定の種が存在しない腸は不健康でしょうか? また、何と比較してでしょうか?
人間のマイクロバイオームにとって何が「正常」または「健康」であるかを定義することは重要であり、これは国、地域、コミュニティ、都市、またその人が若いか年寄りか、裕福か貧乏か、社交的か孤独かによって大きく異なる可能性があります。
これは、すべての人のための個別化医療の夢に対するさらなる挑戦ですが、その間、腸内細菌叢を改善するためのヒントをいくつか紹介します。
この記事はBBC Focus第303号に最初に掲載されました。購読方法はこちらでご確認ください。
専門用語解説
抗生物質 -これは微生物の増殖を抑制したり、破壊したりする薬です。抗生物質は実際には、細菌自体が生存の一形態として（あるいは、科学者の中には細菌同士の「コミュニケーション」だと考える人もいます）生成します。
ディスバイオシス -これは共生の調和が崩れ、微生物群が宿主に害を及ぼす方向に変化することです。このフレーズは人間の腸内微生物叢によく適用され、有益な細菌が少なすぎて、悪玉菌、酵母、寄生虫が過剰に増殖することで引き起こされる状態を表します。
微生物 -針の穴に何百万個も入るほど小さい単細胞生物。
微生物叢 -「微生物叢」とは、一群の微生物を指します。「マイクロバイオーム」はもともと、これらの微生物のゲノム（すべての DNA）を指していましたが、現在では「微生物叢」の代わりに使用されることもあります。
プロバイオティクス -微生物の成長を刺激する物質。
共生 -これは、物理的に密接に共存する 2 つの異なる生物間の相互作用を指し、通常は両者に利益をもたらします。
私たちの体を住処とする生物（そしてそれらがどこにいるか）
➀ 頭皮に
最近の研究によると、フケは頭皮によく見られる 2 つの細菌、プロピオニバクテリウムとブドウ球菌の微妙なバランスによって引き起こされます。
② 脇の下に
一部の細菌は汗に触れると、チオアルコールと呼ばれる刺激臭のある化合物を生成します。ブドウ球菌は最も悪質な細菌の 1 つです。
③ あなたの排泄物の中に
腸内には膨大な数の微生物が存在するため、その多くが便の中に入り込むのも不思議ではありません。固形廃棄物の推定30パーセントは死んだ細菌です。
④ あなたの足に
足の臭いの最大の原因は、おそらく表皮ブドウ球菌でしょう。この菌は、熟成したスティルトンチーズの臭いであるイソ吉草酸と常に同時に存在しているようです。
⑤ あなたの口の中で
ミュータンス菌は糖分を酸に変え、歯のエナメル質を侵食して虫歯を引き起こします。
⑥ 肌全体に
プロピオニバクテリウム・アクネスは毛穴や毛包の奥深くに生息し、シミを引き起こす可能性があります。
⑦ あなたの腸の中で
私たちのマイクロバイオームの大部分、400兆個もの微生物がここに生息しています。
⑧ 膣
1 種類のラクトバチルスが優勢です。この細菌は乳酸を排出し、膣環境を低い酸性 pH に保ち、他の細菌、酵母、ウイルスの繁殖を防ぎます。
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