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冬休み帳、お焚き上げ

お正月が終わると、正月飾りや前の年のお札などを持ち寄ってお焚き上げする行事、どんど焼きがある。子どもたちが地域を回ってそれらを集め、大人たちがやぐらを組む。小学5年生の児童が点火役を担い、火がつくと勢いよくやぐらが燃えていく。舞い上がる炎、竹がはぜる音、舞い落ちる燃えかす...年末年始を挟んで久々に顔を合わす人々が交わす会話もいつもの通り。平和だなぁ、と思う。残念なのはコロナの影響で、どんど焼きの炭で焼くお餅は持ち帰って食べることになっていたこと。コロナ前は、めいめいに持参したお餅を焼き、その場で食べて一年の無病息災を祈った。お餅だけでなく、炭火で焼くので、ウインナーやマシュマロ、みかん、焼き芋などなど、それぞれ好きなものを持ち寄って楽しいひと時だったのに、ここ数年は少々寂しい気がする。

冬休みに入って宿題をやる気配のない三男に、そろそろ宿題やったらー?と何度か声をかけたが、「冬休み帳は燃やすから大丈夫」との返事。何年も前から、長期休みの度にそんなこと言いながら結局最後の日にぶつぶつ言いながらもやっていたので、どうするかなー、と見守ることに。冬休みも残すところ3日となった昨日聞いても同じ返事が返ってきた。そろそろ決行するなら本気になった方がいいんじゃないかと、「どんど焼きで燃やしたら?」と言ってみた。「うん、そうする」と。

「宿題なんてなくなればいいのに」と思うのは子供なら普通だと思うし、長期休みくらい遊びたいだけ遊ばせてやればいいのに、と親としてずっと思ってきた。でも、先生たちはせっせと宿題を準備してくれる。本当の意味で消し去ってしまおうという発想を、自分が小学生だったら持てただろうか?たぶんできなかったと思う。だからこそ、三男の発想は面白いと思うし、仮に決行した場合、学校でどう言い訳をするのかも見ものだな、と思い全面的に協力するつもりでどんど焼き当日の朝を迎えた。

家を出る直前に「どうやって持って行けばいいかな?」というので、丸めて新聞にくるんで紐で縛っておけば書初めっぽくなるんではないかと提案し、新聞と紐を準備した。この時点ですでに母も共犯者である。三男は丸めた冬休み帳を袖に忍ばせ、正月飾りを集めにいった。やぐらを組み終わる頃、確実に燃えるようにやぐらの奥に突っ込んで、あとは点火を待つだけになった。今年は点火役の小学5年生が一人しかいないので、6年生も点火役をやらせてもらえることになった。点火の合図で自らやぐらに火をつけ、お焚き上げが始まった。

たぶん本人より、私の方が達成感を味わっていたんだと思う。本人は平然とした様子で、事情を知っている友達と遊んでいる。宿題を燃やした息子を褒める母親がどこにいるだろうか、と怒られそうだけれど、私はそんな三男を誇りに思う。あとは冬休み明け、先生にどう説明するのか...楽しみである。

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