消せなかった声。

もうずっと昔の話。携帯なんて時代の話だけど、別れた彼からの録音メッセージを長い間、消せなかった。

好きで好きでとても好きだったときに、ふっと私の手を離して別の子と付き合っちゃった彼からのメッセージ。冗談っぽく入れてくれた短いメッセージ。

別れても何度も何度も聞きかえして、声だけでも聞ける幸せを噛みしめた。

もう消してしまおうと繰り返し思ったけど、どうしても削除ボタンが押せなくて。

もう聞かないようにしなくちゃって聞くのを我慢して過ごしてもたった2日ほどで耐えられなくなる。

彼の声が聞きたくて。

彼の声を失いたくなくて。

消すまでにどれだけかかったのか覚えてないな。

でも消した瞬間の記憶は残っている。

がんばって消したんだ。


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