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ぎゅー

「どうぞ」

そう言って私が膝をトンと叩いたら、あなたが転がってきた。

耳かき。

私ね、耳かきが好きなの。これほんと。

あなたの耳を優しく持って、ちょこちょこって耳かきする。

ふんわりした髪をそっとよけながら、耳のなかを覗き込んで、ちょこちょこする。

気持ち良さそうなあなたの顔。ふふ。

「いたっ」

あ、ごめんね。ちょっと痛かった? 右の耳は苦手なんだよね。うっかりしちゃった。

なでなで。

肩の力抜いてね。気をつけて優しくゆっくりするからね。

耳かきの時間。そんなにあまい時間でもないんだけど、私は耳かきするのが好きだし、あなたは耳かきされるのが好きだから、しあわせな時間だよね。

ちょこちょこ。

終わった合図に、私はあなたの頬にキスをする。

そしたらあなたは手を伸ばして私を引き寄せて、キスのお返しをくれるんだよね。

「ありがとう」

大好きだよ。

ぎゅー。


#短編小説 #掌編小説 #あなた #しあわせ





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