ダークスレイヤーの帰還、第一章・銃と眠り人、レビュー

オープニング「白き竜は神聖乙女を乗せて」を読んだ。

結論から言えば、「ああ、設定資料集ね」といった所だ。

大層な文章ではあるが、物語ではない。

だ設定を羅列しているだけで、それが物語にどのように関与しているのかが不明だ。

複雑な用語や場所を次々と登場させるだけでは、読者はついていけないだろう。

世界の広がりを表現したいのであれば、その中でのキャラクターの動きやストーリー展開をしっかりと書かねばならないが、この作品ではそれがない。

私の目にはキャラに繋がった糸がありありと見える。

その糸は作者の十指に繋がっていて、「ああ、何もかもがご都合展開なのだ」と悟らざるを得ない。

では具体的にどこがどう駄目なのかを2.3指摘していく。


「工人の都市国家とバルドスタの騒乱が落ち着いた日の未明。」

冒頭からいきなり固有名詞を羅列しているが、読者にはこれらの背景が全く説明されていない。いきなり知らない土地や出来事を提示されても、読者は困惑するばかりだ。本格ファンタジーの肝は世界観の妙なのだが、それっぽい単語をつらつら並べるだけでは本格ファンタジーとはならない。


「聖王国エルナシーサの薄明の空中庭園の中央に一筋の光が落ち、重厚な聖扉が現れる」

「聖王国エルナシーサ」や「空中庭園」がどのような場所なのか、具体的な描写が欠けている。読者は情景を思い浮かべることができず、世界観に入り込めない。この作品は本格ファンタジーを喧伝しているのだから、作者は描写不足を恥じるべきだ。本格ファンタジーの肝は世界観の妙なのだが、それっぽい単語をつらつら並べるだけでは本格ファンタジーとはならない。


「見てユレミア! たまには夜更かしもいいでしょう? ほら、夜の不凋花(ふちょうか)が沢山咲いていますよ!」

キャラクター同士の会話が説明的で、自然な流れを感じない。まるで読者に設定を説明するために話しているようで、キャラクターの感情や個性が伝わってこない。外面だけ美しい人形が、表情も何も変えずに設定を話しているだけの様に思える。実に不気味だ。本格ファンタジーの肝は世界観の妙なのだが、それっぽい単語をつらつら並べるだけでは本格ファンタジーとはならない。

総じてずっとこんな調子だ。

固有名詞、固有名詞、固有名詞、固有名詞、固有名詞、固有名詞ときて、その固有名詞にさらっと触れる地の文やキャラクターの台詞。

この作品は、物語として見るならば無貌の人形がぺらぺらと設定だけをくっちゃべっている大駄作である。

しかし設定資料集として見るならば悪くはないだろう。

ダークソウルだとかその辺の雰囲気を真似た物語風設定資料集だ。

作者は物語を書きたいのか設定資料集を書きたいのか。

私には後者の様に思えてならない。

だが、作者がこういったスタイルを作品を好むなら今の時代にはAIがある。

AIはその手の仕事が大変得意としている。

10秒やそこらでこの作品と同じ様なものを量産できるだろう。

では最後にこの回の評価を書く。

設定資料集として見るならば6/10

物語として見るならば2/10


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