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淫魔屋敷・肆話

〜宴会室〜

「本日は、源内様より宴会を賜り淫魔衆一 
同、心より感謝申し上げまする。
 皆様方におかれましても、日頃の鬱憤晴らしとなりますように、今宵は浮世を忘れ、どうぞ心ゆくまでお楽しみ下さいませ…」麗子

「わーー〜!(パチパチパチ!)」殿方達

〜呑処〜

「奥は盛り上がっていますね〜」梅
「いいな〜私も踊りたい」舞
「舞さんは踊る舞子さんなんですね」梅
「そうよ〜一応、花形だったんだから〜」舞
「スゴーイ!他の姐さん方は?」梅

「純ちゃんは私と同じ舞子、
 華恵ちゃんはお琴、
 久美ちゃんは三味線、
 麻子ちゃんがお歌で、
 加代ちゃんが尺八だね」舞
「お蜜ちゃんと麗子さんは?」梅
「あの二人はね…一通り出来る」舞
「すごい…」梅
「麗子さんが、この面子を集めたからね。
身体目当てだけじゃなくて、演舞や楽奏でも楽しんでもらいたいって…」舞
「なるほど〜…」梅

「アタシも一通りできるよ〜!」純
「あっw聞いてた?」舞
「お酒足りないから、お願いしま〜す」純
「はい、すぐにお持ちします!」梅

お盆にトックリをのせ、廊下を進む。
宴会の間からは優雅な演奏と歌声が聴こえてくる。

「失礼いたします」梅

襖を開け、室中の宴を目にした瞬間…
まさに、時がゆっくりと流れるかのような素晴らしい光景を目の当たりにした。
それは美しく華やかで、どことなく悲哀と妖艶さを表現しているかのような…

舞踊を中心とした演奏は、踊りの動きと調和し見事な女形のしなやかさを演出していた。

(チン…トン…シャン……)

「ありがとうございました」お蜜
「お蜜演舞の「鷺娘」に御座いました」麗子
「可愛かったよ〜!」平賀源内

「次は、私の演舞となります。「藤娘」をご覧いただきとう御座います」麗子
「いよー!待ってました!」殿方達
「なにぶん娘と言うには歳を取り過ぎ、身体も固くなってまいりましたので、上手く踊れなかった際には笑い話にでもしてやって下さいませ」麗子

「梅さん、私トックリ片付けながら舞さんところに行き来ますね」お蜜
「あっ…それは私が…」梅
「麗子さんの舞、絶対見たほうがいいですから!ココにいて下さい」お蜜

「梅さん、コッチ座って!」麻子
頭に包帯を巻いた麻子に呼ばれる。

「アタイの横で、この小筒太鼓たたいてて」麻子
「えっ!やったことないよ!」梅
「アタイのヨッ!とかハッ!っていう合いの手の後に叩けばいいから」麻子
「え〜大丈夫かな〜…」梅
「仲間になりたいんでしょ!笑」麻子
「うん…やってみる!」梅

麗子が座敷中央に鎮座し、三つ指付いて頭を下げる。
鳴り物衆の間に、一瞬緊張がほとばしる。

久美の三味線から演舞が始まり、麗子が舞い始める。
その姿は、気高く凛々しく舞う天女のよう。
悠然と空間を舞い、男たちに優しく微笑みかける。

琴の弾音も、
三味線の音色も、
尺八の響きも、
天女の舞いと同調して揺らめいている。
歌声は動きに抑揚をつけ、演舞を効果的なものにする土台になっている。

全てが調和している。

一人ひとりの役割が、この場を作り上げる一端を担い、スケベ顔で酒を飲む殿方でさえ大切な一欠片となって輝いている。

終わらないでほしい…
この空間にずっといたい
そう思わせるような、
なんとも言い難い至極の時を過ごした。

「梅…叩いて、梅さん!」麻子
「……あっ、はい!」梅
 
(トン、トントントントン)

「お粗末さまに御座いました」麗子
「素晴らしい!(パチパチパチ!)」殿方
「流石ですね!天界の舞を拝見させていただきました」平賀源内
「あら〜ここは天国みたいってことですか〜?」純
「いや〜恐れ入った!竜宮城の乙姫も真っ青だね!」平賀源内

殿方達もとても楽しまれているようだ。
今日は花代もたんまり稼げるのだろう。

(花代)…お嬢に渡すチップのこと

「では、皆様。舞踊を楽しまれたあとはお待ちかね…お好みの色子と床で舞うというのは如何にございましょう?」麗子

「おっ!そうこなくっちゃ!」殿方達

※ここから先は大人の遊び
 
それぞれが好みの子と部屋へと移動していった。廊下に出ると色々なところから艶めかしい声が聴こえてくる。

複数プレーも……

「いや〜楽しかったよ!」平賀源内
「平賀様は誰も抱かれなくて宜しいんですか?」麗子
「俺は……そばに君がいてくれるだけで充分だよ」平賀源内
「あら…照れますよ」麗子
「こっちむいてごらん」平賀源内
「恥ずかしいです…」麗子
「ほら、僕の目を見て…」平賀
「お上手ですこと…」麗子
「僕のウナギが大きくなってる」源内
「バカっ…w」麗子
「君だから、こんな気持ちになるんだ」鰻
「騙されませんよ…」麗子
「騙すだなんて…酷いな…」源チン
「だって…」麗チン
「そんなふうに見える?」鰻チン
「……おモテになるでしょ」麗子チン
「僕を信じて…」源チンチン
「……源ちゃん」麗子チンチン
「唇を……」源ち〜ん
「今だけ…ね…」麗子ち〜ん

お尻出てます…
麗子さん

華やかで優美な夜は、
とてもいやらしく卑猥な夜へと変化し、
それぞれが幸せを求め、
かりそめの恋を演じ、
そして、刹那的な愛を与え合うのであった…


〜あくる日〜

「ねぇ、みんな!大変!」加代
「どうしたの?」純
「お蜜ちゃんが!」加代

お密の部屋へ行くと、斑(まだら)な顔をして寝込むお蜜の姿があった。

「ちょっと…」純
「これは…」舞
「ヤバいね」麻子

この時代、性産業の世界では切っても切れない厄介なものが蔓延っていた。

性病である。

もちろん、現在においても病は蔓延している。
だが、大抵の病であれば医療薬が充実しているので、診察と処置を適切にすれば大事にはいたらずに済む。
しかし、この時代には風邪薬はおろか、鎮痛剤ですらマトモな物は存在しない。

伝染病になったら最期…
離れたところに隔離され、ろくに栄養も取れず、朽ちていくのみの終末を迎える事になったかも知れない。

「どうしますか?麗子さん…」加代
「そうだね…」麗子
「アタシ、絶対お蜜を助けたい!」加代
「うん、分かってるよ」麗子
「あのさ…」純
「なに?」麗子
「こないだお客さんから聞いたんだけど、吉原の遊女のとこに新薬作ってるってゆう医者がいるらしくて…」純
「新薬…?」麗子
「なんでも、野風っていう遊女が梅毒患ってて、それに惚れてる医者もどきが薬を調合してるって話をきいたけど…」純
「……なんでも試してみるに越したことはないね」麗子
「アタシ、行ってみる!」加代
「頼んだよ。梅、アンタもついてっておやり」麗子
「は…はい!」梅

こうして私と加代は、吉原の遊郭に出向き、お蜜を救う薬を手に入れてくる事となった。

続く…





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