弱点①

私には絶対に直したい弱点がいくつもある。自慢ではないが、そんじょそこらの人間よりも弱点が多い自信が確かにある。その中でも特筆して直したいのが「度を越した心配性」である。まず毎朝家を出る時、特に私が家を出る最後の一人であったとき、不安で仕方がなくなる。鍵はちゃんと閉めたか、電気がつけっぱなしじゃないか、冷蔵庫のドアはちゃんと閉まっているか、目覚まし時計が変な時間にセットされていて誰もいない部屋で誰かが帰ってくるまで鳴り続けたりしないか、洗面所、台所の水が垂れていないか、もしこれらの懸念が現実になってしまった時には家族に、自分に、ひいては世界に合わせる顔がなくなってしまう。水を、電気を、金を、私の怠慢のせいで無駄にしてしまう。そしてこれらの心配が私の時間を奪うのだ。全項目のチェック、二度目のチェック、それでも不安だから三度目のチェック、チェックの際洗面所や台所に入った時の電気をつけたままか心配で確認しに行く。冷蔵庫を閉めた時の衝撃で野菜室が開いてしまっていないか不安で念の為野菜室をもう一度閉めに行く。鍵はドアノブを何度も捻り、それでも不安だからドアの隙間の鍵の金具の影を写真で撮る。
こうして挙げてみると本当に時間の無駄だ。なんせ列挙した懸念はどれも一度も現実になった事はないから、私は私の杞憂に毎日十数分を奪われてしまう。けれどこのチェックがあるからこそ毎日我が家の平穏が保たれていると考えると辞められないのだ。私の毎日の時間のコストと家に強盗が入るリスクが釣り合ってると思ってしまう、さらに言うなら確認を疎かにした日は上に挙げた心配が頭の中を回り廻りとてもじゃないが授業所ではない。私は私の心配性から逃げられないのだ。
しかしこのままで良いわけが無い。このままでは私の心配性は心配症になる可能性がある。病気になる可能性がある。現にチェックの時間は変わっていないようで年単位で見ると少しづつ伸びている気がする。具体的な病名は出さない。なぜなら素人が自分が病気なんじゃないかと調べるのは危険だからだ。危険だと柊子先生が玲音に言っていたからだ。けれど自身の特徴が少しづつ疾患に近ずいて行くのを黙って見ている私ではいられない。具体的な対策をこれから考えなくてはならない。そして毎日十数分の時間をドブに捨てる私を、未来の私に馬鹿にして欲しいのだ。あの頃マジでアホだったなあ。頭大丈夫か?と。本当に頼むぞ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?