タライと水
根室本線が31日で途中まではまだあるのだけど、富良野から新得の間が廃線になったとテレビでやっていました。
滝川が起点ですが、そのまま根室の最終駅まで北海道の大動脈として存在していた長い線路です。
母も、きっと根室から出てきて帯広厚生病院に勤務した時期があるはずですので、行くときには根室本線を利用したはずです。
廃止は時代の流れでもありますので致し方ないですが、日本人の人口の過疎化がもっとも深刻な理由なだけにここだけに終わらず、どんどん広がっていくことでしょう。
科学が進んで古いものから新しいものへと変わっていくならともかく過疎によってなんてなんか寂しい気がします。
母が帯広厚生病院時代にですので、もう60年も前の話です。
一昔ではなく、もうふた昔くらいになる話ですが、母が僕が高校生くらいの時に話していました。
病院の薬局に夜に一人で残業をしていたら、産科の分娩室から助産婦さんがなにかを抱えて走って薬局にやってきたことがあるんだよ。
なにかと思うと、抱えていたのは赤ちゃんだったんだ、生まれたばかりの。はっきりは見れなかったけど、そんな感じで、どうしたの!って思ったんだよ。
そうしたら、その助産婦さんがタライをここにもってきて水を張るように言われて、そこに水をはったタライを用意したんだよ。洗濯室からもってきて。
うん。それで?
私に、向かってそこから出ていきなさい!すぐに!
そういわれて私はびっくりして、部屋を出たの。ほかには誰もいなかった。
数分して、助産婦さんは部屋からでてきて、タライを水を捨てて、もとに戻してください。迷惑をかけました。ごめんねと。
私は、そのタライの水で生まれたばかりの赤ちゃんをなにかの事情で窒息されたんじゃないかと思うの。
え??そんなことが?
その助産婦さんはすごい良い人でたくさんの方から慕われていた人だったのだけど・・・その人の正義だったと思う。
私が言いたいのは、自分の中の正義が決して世の中の人みんなの正義じゃないってこと。
あなたは、正義感の強い高校生よね、生徒会長にもなって慕われてもいるのはよく見ててわかるよ。
でもね、決して正義感が一人歩きしちゃいけないの。あなたはその心配があると思ってるのよ。
母の言う事がいまいちそのころの僕はよくわからなくていましたが、今はよくわかります。
僕はそういう人間でした。
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