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まもるくんは女の子になりたかったの。

小娘がはじめて「性」を意識した日のことについて綴りたい。男と女を意識した日のことを覚えている人はそういないと思うが、小娘にはとても衝撃的だった出来事がある。

これは小娘が保育園に通っていたときのことである。小娘と同い年の友達は、男の子が多かった。その中で一際目立つ子がいた。

それが今回の題にもある、まもるくん(仮名)である。

見た目は男の子だが、仕草や話し方はとても上品で、小娘よりも女の子らしかった。ただ、まもるくんが目立っていたのは、それだけでなかった。彼はおそらくハーフで、肌の色が暗かった。目鼻立ちもしっかりとしていて、髪の毛はクルクルとカールしており、今思えば起源はアフリカの方なのではないかなと。

肌の色も違う。性への違和感。
今思えば、彼はマイノリティの中のマイノリティだった。

小娘は割とまもるくんとは仲良くしていた。
まもるくんのように上品な話し方、仕草はできなくても、話したり、遊んだりするのはとても楽しかった。

ある日、まもるくんが話があると言ってきた。
小娘が「どうしたの?」と聞くと、

「まもるくんはね、女の子になりたかったの。」
と寂しそうに言った。

小娘はなんと言葉をかけてあげればいいのかわからず、静かに「そっか。」と一言発した。その後、小娘は何も気の利いたことも言えずに、ただまもるくんの顔を見ることしかできなかった。恥ずかしそうに、まもるくんは「それだけだよ。」と言っておもちゃを取りに行ってしまった。

幼いながらも、小娘はこれは誰にも言ってはいけないことなような気がして、誰にも話せなかった。

もともと小娘も負けず嫌いで、身体を動かしたりすることが好きな男の子らしい性格で、服装的にも男の子に間違われることはとても多かった。だから、まもるくんもそういうギャップのある子に話して、共感が欲しかったのではないかなと思ったりもした。

まもるくんとの会話の内容は話せなくても、他の人がどんな反応をするのかは知りたかった。だから、一度母親に聞いた事がある。

「もし、〇〇ちゃん(小娘)が男の子じゃなくて、女の子を好きって言ったらどうする?」

私が母親で、突如園児にこんな質問をされたら、腰抜かしてしまうだろうな。と思うが、母親は至って冷静だった。

異性になりたかった=自分と同じ性別が好き
当時まだ6歳にも満たない小娘が、考え抜いた質問だった。LGBTQはもっと細分化されていて、そんな単純なものではないと、今考えればよくわかるのだが、当時小娘なりに考えに考えた、質問だった。

「〇〇ちゃん(小娘)が幸せなら、ママはそれでいいよ。」

母親の回答には優しさが込められていた。
そして小娘は自分の生物学的な性と精神的な性が異なっても、周りの人はサポートしてくれるんだなということがわかった。

だからその後も、まもるくんと今までと変わらず仲良くできた。彼は私に「普通ってなんだろう?」という問いを与えてくれた。そして小学校に上がる前に、「多様性」について考える機会を与えてくれたのだ。

小娘の人生を振り返ると、LGBTQらしき人は結構いた。それで悩んでいた友達もきっといたと思う。それでも性という枠に捉われずに、1人の人間として小娘が彼らと向き合うことができたのは、きっとまもるくんとの出逢いがあったからだと思う。

まもるくんは今どうしているのだろうか。いつかまたどこかで会いたい。そして、あの日、私を信じて、自分のプライベートなことを打ち明けてくれた事、そのおかげで成長をすることができたこと、感謝の気持ちを伝えたい。

今も小娘は変わらず、あの時のままです。
いつかまた積もる話をたくさんしたいね。


写真はフランスのアルザス地方コルマールに行った時のもの。メルヘンで可愛らしい雰囲気が、まもるくんとの思い出を彷彿とさせる🙌🏻

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