気をつけてね

新卒での仕事が始まって数日。私が出勤のために家を出る時間は12時前で、ちょうどおばあちゃんはお昼ご飯をつくっているころ。私が「いってきまーす」と玄関から言うと、すぐにおばあちゃんの足音が聞こえてきて、がちゃっとドアが開いて、「気をつけて行ってくるんだよ」と言う声が私にとどく。それだけ、その一言を言うためにキッチンからわざわざくる。今までの人生で、おもにお母さんやおばあちゃんから何百回ももらった言葉なのに、ここ数日はやけに「気をつけて」の言葉とともに私に顔を見せるおばあちゃんが頭に残る。「早く帰っておいでね」でも「頑張ってくるんだよ」でも「待ってるよ」でもなく、「気をつけてね」の一言が、なんだかすごく心地よく心にひろがる。言葉で細かく説明するのは私には難しいしなんとなく野暮な気もするんだけど、この言葉には愛がいっぱいいっぱいつまってるんだなあと思う。たぶんおばあちゃんは特に意識はせずとも、私にそう言い続けるんだろう。それが、おばあちゃんが私を想う気持ちなんだな〜と思ったり。いつかこれを受け取る側じゃなくてあげる側になるまで、おばあちゃんのこのあったかくて優しい、愛に溢れた「気をつけてね」を存分にもらおう、と思う、なんてことない夜。

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