しいたけ賞(仮)その25 XenoMessiaN-ゼノメサイアN- 作者 甲斐てつろう様
本編URL
https://kakuyomu.jp/works/16817330667234371764
前書き
この記事は作品のネタバレを含みますのでご注意。
こちらの記事はあくまでも筆者の個人的感想です。
例えそのような内容であろうと、作品の価値を定めるようなものではないことは予めご了承ください。
あらすじ
東京の街に突如出現した凶悪な罪獣バビロンに立ち向かった巨人の正体は愛に飢えた青年だった。
皆が憧れるヒーローのように活躍すればまだ知らぬ愛を得られると意気込み奮闘するのだが……
これは現実から目を背けながらも一方的に他者からの愛を待ち続ける者たちの物語。
ストーリーとかについて
ウルトラマン的な巨大ヒーローに変身して、襲ってくる怪獣と戦うヒーローもの的な小説。
その中で主人公の身の上や心情を深く掘り下げ、ヒーローとは、正義とはについて深く掘り下げていくような物語となっている。
ヒーローには苦悩がつきものといえばその通りではあるのだが、どうにもこちらの小説はその比率がかなり大きなものとなっている。
過去にあった事件から心に傷を負い、日々の生活ですら上手くいかない主人公。そんな彼はテレビの中にいる架空のヒーローに対して、憧れとも嫉妬とも呼べるような複雑な感情を抱いている。
この辺りの心情の掘り下げがかなり物語のメインとなっており、一先ず一章を読んでいる間には大半が主人公の如何ともしがたい現状のお話だった。
ではそれがつまらないのかというとそんなことはなく、彼の置かれている身の上、辛い状況故に姉に八つ当たりをしてしまったりなど、苦しい状況がこの上なく鮮明に描かれる。
そのリアリティがまた読み応えを生んでおり、それだけでもちゃんと物語として成立しているだけでなく、彼が変身するまでの『溜め』として上手く機能している。
怪獣がやってきても、都合よく奇跡が起きてすぐに変身するわけではない。
犠牲は出るし、街は壊れる。
決して痛快な物語ではないが、だからこそ読者を惹きつける確かな魅力がある小説といっていいだろう。
キャラクターとかについて
主人公の造形はかなり上手くできている。
辛い状況なのはわかるが、だからといって全てが許されるわけではない。過去に傷を持った者の生きづらさが見事に表現されている。
最終評価(極めて個人的な感想)
文章
文章はかなり読みやすい。
状況も伝わってきやすいし、主人公の厳しい心の内側がくどくなりすぎない程度に書けているのも良き。
キャラクター
上にも書いた通り、主人公のキャラクター造形がお見事。
程よく情報を見せながら、説得力のあるキャラ付けができている。
構成
主人公の性格や、その原因。
彼の周りの人間関係の開示に、話の中心となる事件の発生などのテンポが非常によく、次々と物語が展開し情報量も程よく漏れがない。
かなり上手い構成となっている。
設定
主人公の生い立ちがかなり強烈。
それ以外にも意味深なシーンがあったりと、現在の情報だけでも今後への期待は大きいものとなっている。
総評
まだ序盤ではあるが、続きが気になるようなストーリーの構成。
主人公の強烈でリアリティのあるキャラクター造形など、全体的にクオリティの高さが光る小説。
ストーリーも、このまま少しずつ状況が良くなっていくのか、それとも更なる苦難が待っているのか、その辺りが全く読めず続きが気になるような作りとなっている。
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