激辛Web小説発掘記 その7 二つの世界の冒険譚 作者 アラビアータ好き様

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前書き

この記事は作品のネタバレを含みますのでご注意。
こちらの記事はあくまでも筆者の個人的意見です。
評価の基準としては200円~700円前後の書籍を購入し、読んだものとして付けさせていただきます。そのため基本的には厳しめとなります。
※こちらは『第一章』までを読んだ時点での感想、レビューとなります。

※注意

こちらはかなり辛口なレビューとなります。用いる言葉なども読んだ人が不愉快になる恐れのあるものが使われる可能性もありますのでご注意ください。
またこれらの記事は特に筆者の感性や感想が強く出たものとなっています。

誰が読んでも必ずしも同じような感想を抱くわけではないので、この記事が作品を選ぶ基準とはなりえないことをご了承ください。

あらすじ

此処は架空の世界。ある日、平穏無事に暮らしていた青年、クラウス・ブレマーは空から墜ちてきた謎の少女と出会う。
少女は見た事も無い服を纏い、聞いた事も無い言語を話す。
すると、少女を追って、同じような衣服を纏った男達が現れた。

幼馴染みであるソフィア・シュピッツと共に彼らを退けたが、村長から災いをもたらすと言われ、少女と共に村から追い出されてしまう。

少女の目的とその真意を探るべく、クラウス達は旅に出る。

ストーリーと見所

と、まぁ、ラノベ的ではない異世界ファンタジー。
ラノベ的ではない……?文学的……?ちょっと違うな……。こう、あれだ。文芸的とでも表現しておくべきか。

なのでチートもなければ簡単に惚れてくれるヒロインもいない、のんびりゆっくり丁寧にお話が進んでいく系のファンタジー小説となっている。

舞台になるのもやはり中世ヨーロッパ風……まぁ、ネットスラングを使うのならばナーロッパ的なあれではなく、名称を見ればインド系な雰囲気。

ちなみに一章の時点では魔法的なものはなさそうな感じ。一応ストーリーとしては精霊がいたりと超常的なあれこれはありそうなのだが、現状では主人公達がそれを用いて問題を解決する雰囲気はない。なんとも硬派(?)な物語となっている。

バラモンやらクシャトリヤやら。とは言えクシャトリヤが騎士階級だったりとその辺りはオリジナルのアレンジが施されている模様。

とは言え物語としては村祭り会場に急に現れた謎の少女を、主人公とその幼馴染が助けたりなんだりしながら、一章の序盤は言葉も通じない彼女が何者なのかを確かめるために、途中からは明らかになった目的である……まぁ、早い話が世界の破滅を防ぐための旅へと変わっていく。

で、やはり特徴としてあげられるのは作者さんの独特……と言うかラノベ離れした歴史小説風(この表現が正しいのかはわからぬ)の文体だろう。それによって物語自体に厚みが生まれ、割と文章を読んでいるだけで世界観に浸れる楽しさがある。

まさに文を読む楽しさが味わえるのはこの小説ならではではないだろうか。特に戦闘シーンなどではそれが違和感なく発揮され、物語の流れ上複数人での戦闘が多いのだが、キャラクターを見失わずに読むことができる。

そしてここまで書いて、どうやら作者さんが激辛をご希望であることに気が付いて、直ちにタイトルを変更した模様。まぁ、褒めるところは別に変らんしええやろ……。

なのでまぁ、実際のところ小説としては普通に出来がいいので激辛にしたところで言うことも少ないという困ったちゃんではあるのだが……。
しかし、激辛にした以上やはりそこそこの悪意と最近流行りの「それ貴方の感想ですよね?」を使って作品にダメージを与えていこうと思う所存。

で、実際この物語を読んで楽しいかと言われるとこれがまー……返答に困る。
こう、確実に文を読んでいるのはそれなりに楽しいのだけど、ストーリーとしてはやはりお粗末な点が幾つかあげられる。

一章まで読んだ時点で、全体的にキャラクターの掘り下げが行われていないから何ともふわふわ感が否めない。

一応メインキャラクターには過去なりなんなりで設定があるような描写はあるのだが、引っ張り過ぎ感は否めない。
とは言えまぁ、そこに関しては所謂キャラクターノベル……つまりはライトノベル的なものではないのである程度は仕方がない部分もある。

勿論そこに関しては作者さんがどう思っているかによるだろう。
仮にこの作品がキャラクターを売りにしているのならば、お世辞にも成功しているとは言ってあげられない。

ではストーリーの話をしよう。
うん、まぁ、なんかこう……安っぽいRPGみたいだよね。

二つの世界に別れてて、それがなんか悪い奴の所為でヤバイことになるからその中心となる女の子と一緒に旅に出ると。

別にそれが安っぽいとか言っているわけじゃなくて、手っ取り早く説明すると異世界への扉を開くために四人の精霊に認めてもらって、それらから鏡を貰うんだけどその流れが一緒なのよ。

精霊が試練を与えるからそれを倒して……と言った流れ、途中からはそこに主人公達と敵対することになった王国の四天王的な連中も入ってくる。

現地の仲間と一緒にそれらを倒して……って流れが何度も続くので、やはり展開としてワンパターン。
この辺りは作者さんの前作と同じ欠点をそのまま引き摺ってらっしゃる感じが否めない。

物語としてはまだ一章なので、恐らくは全然始まったばかり。

恐らくはキャラクターや世界観の触りを紹介するぐらいの雰囲気で読むことはできるが、やはり欲を言うならばもう少し引き込まれるような要素が欲しかったところではある。

キャラクター

クラウス・ブレマー

主人公。
彼が最も輝いていたのは一章で狼を倒していた時だろう。

なんやかんや困っている女の子や幼馴染を見捨てられないいい奴ではあるのだが、物語的には能動的な動きを見せないのでちょっと印象が薄い。

特に幼馴染はキャラクターとして立っているだけに、その辺りは残念。

とは言えまぁ、そこに関しては彼にも秘密があるようなので敢えてやっている可能性は高い。

強さはそこそこ、性格は割と流されやすい、(今のところ)優れた特技を持っているわけでもないと苦しい立場に置かれている。頑張れ。

ソフィア・シュピッツ

ヒロイン……ヒロイン?

主人公の幼馴染で人が困っているところを見過ごせない女の子。戦いに関しても武闘派で、バリバリ最前線で戦う。

最序盤から過去に何かあったであろうことが匂わされ、そう言った意味でもキャラクターとしては非常に強く印象に残る。

序盤こそ物語引っ張っていく原動力となるが、目的ができてからはそう言った部分もなりを潜めていってしまう。

それでもまぁ、ストーリー的にも最前線でお喋りをしているので何かと目立ってはくれている。

ワン・ランレイ

三人目の仲間。

別の世界の住人で、彼女が主人公達の前に姿を現すところから物語が始まる。

旅の理由となるので、物語中ではそこそこに目立ってくれる。割と幼げな性格だからかあちこち動くのでその辺りも上手く作用しているのだろう。

総評

評価点

やはり文章としては読ませる力を持っている。

そう言った意味では文を読んでいるだけでそこそこに面白い。

読みやすさも相まって、上記で書いたように別段物語としてはそれほどではなくても楽しく読むことができる。

その不思議な魅力こそが小説の神髄であるとするならば、実に見事な小説なのかも知れない。

問題点

とは言えまぁ、面白いに越したことはない。

やはりドラマ感が不足しているのは致命的と言える。メインキャラクターのあれこれに関しては恐らく今後にとっておいてあるのだろうが、それならそれでまた別の見所が欲しかったというのが正直なところ。

他のキャラクターに関しても些か簡素過ぎるのは否めない。

途中で登場する四天王やら謎の男やら、それらの人物達の詳細が後半で明かされるのだが、出番自体が少ないし特に印象にも残っていなかったので「あ、そう」ぐらいの感想で終わってしまったのは残念。

ただし生存しているキャラクターに関しては今後の活躍もあるので、そちらに期待できなくもない。

一応道中の同行者に関しては伏線も張ってあったので多少感想もあったのだが、それにしても「え、今それやるの……?なんで……?」と思ってしまった。

最終評価 52点(Web小説としては充分に良作)

敢えてあれな言い方をするのならば、前作とそれほど変わっていない。

でも別に前作が悪い作品だったかと言えばそんなこともないし、個性もちゃんと出ているので普通に楽しめる小説。

ストーリーに粗……と言うか先が予測できてしまうような流れは多いものの、大きな欠点がない優等生小説と言えるだろう。

落ち着いた文体と展開で、腰を据えてゆっくり読むのに適した良作小説。楽しんでいただきたいところ。

所要時間は『第一章』までで凡そ1時間。


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