Web小説発掘記 その191 セカイが壊れるオトがする -Medium of Darkness- 作者 うお座の運命に忠実な男様

本編URL

https://kakuyomu.jp/works/16817330652001585403

前書き

この記事は作品のネタバレを含みますのでご注意。
こちらの記事はあくまでも筆者の個人的意見です。
評価の基準としては200円~700円前後の書籍を購入し、読んだものとして付けさせていただきます。そのため基本的には厳しめとなります。
※こちらは『第一巻救世主の少女編』までを読んでの感想、レビューとなります。
※甘口記事です

あらすじ

「―あいつといると、弱くなる。戦士としての能力を失っていく。それがたまらなく嬉しいんだ」『あなたがわたしを守ってくれるのはおカネもらってるからなの?怖くてきけないよ……!』

治癒魔法だけが発動しない魔法世界で、死んだように生きてきた男、傭兵のアストリアはある酒場で奇妙な魔法使いライナスと出会う。その男は世界に三人しかいないアークメイジに匹敵する魔力を持っているという。
ライナスはアストリアに死体回収の仕事を持ちかけ、ふたりは死体回収の冒険をはじめる。
あるダンジョンでライナスは血染めの裏切りを行い姿を消すのだった。
ライナスの謎を追うアストリアは帝国の首都で偶然知りあった盗賊のアルフレッドに魔術師のフランク・マクマナスを紹介され仕事をあっせんされる。
フランクの目的は治癒魔法を復活させることだった。そのためには魔法の使えない神官見習いの少女クレリアを東方の地へ護衛しなければならない。

アストリアが死んだように生きるのは彼が少年時代に恋をした年上の奴隷少女セレナとの悲恋に原因があった。
世界を救うための旅の中でアストリアの魂は再生されていくのだった。

ストーリーと見所

こちらはとても重厚な本格ファンタジー小説。

重い過去を背負った主人公が、仲間達との旅の中で関係を深めていきながら新しい何かを掴み取るようなお話。

本当に掴み取れるかどうかはまだ一巻の時点ではわからないが、一先ず方向性としてはそんな感じ。

内容としては流石の本格ファンタジーの一言に尽きる。細かいところまで作られた世界観は、主人公の周囲だけでは語ることができない物語世界の無限の広がりを想像させるようなものとなっている。

各キャラクターもいい意味でライトノベル的ではなく、しかしだからと言って決して取っつきにくくはない。

ユーモアに溢れていて誰もが魅力的と、読者に対して親しみやすいようなキャラクター性が付与されている。

その辺りの塩梅が非常に上手く、世界観自体はかなり重厚で読み応えがあるのだが、決して読むハードルは高くない。
むしろライトなファンタジー作品を読んだことがある人ならばその延長線上と言った感じで読めてしまうのは驚きの手腕と言えるだろう。

また作品世界についての言及自体は随所で挟み込まれるのだが、それが全く物語の邪魔になっていない。

こう言ったファンタジーを書く場合、世界観を語りたさと物語を先に進めたさが作者さんの中で喧嘩してしまうことも多々あるのだが、こちらの作品にはそう言った傾向はみられなかった。

ストーリーに合わせる形で世界観は少しずつ開示されていき、その部分に関する文章もわかりやすく噛み砕いていくれているので、その部分で更に物語世界への理解を深めると共に強い興味を抱けるように書かれている。

触れやすさこそあるものの、重い主人公の過去やシビアでシリアスなキャラクターの考え方など、いい意味で決して物語が一筋縄ではいかない空気感を上手く構成している。

まさに本格ダークファンタジーと呼ぶに相応しい作品と言えるだろう。

キャラクター

アストリア・ウォルシュ

物語の主人公。

暗い過去の持ち主だが、物事の分別は付く性格。

ぶっきらぼうな一面を見せるが決して悪人ではなく、周りに対してはそれなりに気遣いを見せたりと好感が持てるシーンが多い。
特にヒロインとのやり取りはユーモアが溢れていて、どうしてもハードになりがちな物語へのいい清涼剤となっている。

そう言った描写があることで、今後二人がどうなってしまうのかと読者に期待や不安を与えて、更に作中世界に引き込まれるような作りとなっているのは実に上手い。

それを抜きにしても二人のやり取りは何処か温かくて、読んでいて楽しさがある。

クレリア・リンリクス

物語のヒロイン。
なんとプロのイラストレーターによるイラスト付き!とても可愛らしいので必見!

色々と謎多き少女で、物語の鍵を握っている。

謎が多く、そして世界のためになんやかんやするためのヒロインを主人公が守ると言う構図もまた、読んでいて色々と魅力的なものがある。

上にも書いたが主人公とのやり取りはとても微笑ましい。

色々と不穏な気配があるは果たしてどうなることやら……。どう転んでも物語が面白くなることは間違いない、約束されたヒロイン。

総評

評価点

重厚で作り込まれた世界観は大きな魅力の一つ。

しかもそれらの要素を物語の邪魔にならないような形で、ちゃんと読者の興味を惹くような形で語っていけるのは作者さんの技量の成せる技だろう。

その上でキャラクターにも決して手を抜くことはなく、主人公やヒロインは言うまでもなく他の登場人物もそれぞれに目的を持って行動しており、一筋縄ではいかない人物達となっている。

それらの要素が絡み合って構成される物語は、複雑ながら読んでいて目が離せない。

問題点

特にないです!

最終評価 XX点(甘口なので点数はなし)

本格ファンタジーに求められる密度ある世界観と、そこへの入り込みやすさを両立した非常に優秀なファンタジー小説。

各キャラクターの台詞や立ち振る舞いは実に海外ファンタジーらしく、個性に溢れている。その上で親しみやすい要素や会話も用意されており、愛着も湧きやすい。

ストーリーに関しても文句なし。第一巻の時点では詳しいことは言えないが、今後の展開が気になる要素が幾つも散りばめられている。
それらが回収されていくだけでも充分に楽しむことができるだろう。

ファンタジー好き、特にダークファンタジーが好きならば是非とも読んでみてほしい一作。

所要時間は『第一巻救世主の少女編』までで凡そ1時間ほど。




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