しいたけ賞(仮)その19 『死』の概念は削除されました~忘却の彼方~【SF×恋愛】 作者 日華てまり様

本編URL

https://ncode.syosetu.com/n5907ir/

前書き

この記事は作品のネタバレを含みますのでご注意。
こちらの記事はあくまでも筆者の個人的感想です。
例えそのような内容であろうと、作品の価値を定めるようなものではないことは予めご了承ください。

あらすじ

「この世界からも、記憶からも、消えている人がいるって言ったら、信じてくれますか……?」
おとぎ話のお姫様のような儚げな雰囲気の少女、姫花が、変人と名高い恭弥の研究室を訪れて言った。

「この世界はおかしい」
それが口癖の恭哉は、幼馴染の真人とともに、『死んだ人の記憶が消える』法則を、大学の研究室で解明しようとしていた。
この世界で死ぬと、生きている人の記憶から消えてしまい、存在していなかったことになる。
日記に身に覚えのない名前が書かれていた姫花、母親の記憶を失った莉奈、事故で庇ったはずの相手が消えた優斗、虐めてきた相手が消えた美樹。

それぞれの理由から『死』という概念に気づいた6人は、恭哉の元へと集結し、謎を解き明かす為に巨大な世界へ、命懸けで立ち向かうことになる。

運命のように惹かれ合う者、幼い頃から想いを寄せる物、恋愛に臆病になる者。
過酷な世界で、苦難を共にして絆を結んでいく少年少女は、初めての恋を知る。

「君を、忘れたくないーー」

6人の不器用で繊細な少年少女による、
甘酸っぱくも、切ないボーイミーツガール!

ストーリーとかについて

死の概念がない世界で繰り広げられる、SFミステリー+恋愛物語。

死の概念がないといっても別に登場人物が不老不死というわけではなく、『死』という言葉が存在しない。我々の世界でいうところの死亡した人間はいずこかに消えてしまい、記憶にも残らない世界。

なんとも摩訶不思議でミステリアスな世界観で繰り広げられるのは、謎に立ち向かう登場人物達。そして彼等の恋愛劇。

一先ず文章は読みやすく、その異質な世界観を伝えるプロローグがこれまた秀逸な出来となっている。

そこから主人公達の会話が始まり、ちょっとずつキャラクターが増えていく……といった流れとなっている。

メインとなる登場人物はそれぞれに死の概念がない世界に違和感を覚えており、彼等の話し合いを通じてより世界観への歪みを強く認知させるとともに、謎へと迫っていくような構成が見事。

全体的に物語としても綺麗にまとまっており、わかりやすい歪みというか謎的なものがってストーリーへの興味を惹く要素も強い。

現在読み進めている時点ではストーリーの本題に入っていないにも関わらず、しっかりと読者に対する作品の面白さがアプローチできている辺りも個人的には高得点。

キャラクターとかについて

わかりやすすぎるぐらいに個性がつけられている。

メインとなるキャラクターが多い作品なので、その辺りはとても読んでいて助かる。

最終評価(極めて個人的な感想)

文章

文章は上手い。
テンポもよく、バランスがいい。

説明が多くなってしまいがちな作品ではあるのだが、会話と字の文でバランスよく書いてくれているため読んでいてあまり疲れない。

キャラクター

少し極端なばかりにキャラクター性が分けられているのは読んでいて好印象。

反面、主人公に関しては序盤の会話劇で人となりを説明してしまっているのが少し気になるところ。
とはいえ公式で変人ではあるので、読者が面食らわないための配慮ともいえるのかも知れない。良くも悪くも、といったところか。

構成

謎の提示から各キャラクターの紹介と、それぞれの謎に対する疑問を語るというのはわかりやすくて悪くない。
悪くないのだが、やはり序盤の殆どがキャラクター紹介になってしまっているのはちょっと気になる。

設定

何処となくお洒落さがあり、世界観としても非常に面白い。
各キャラクターの関りや、今後どうなっていくのかも気になる要素として上手く機能している。

総評

キャラクターの特徴と、構成の巧さが光る作品。
世界観としてもかなり気になるような設定を、上手く読者の興味を惹くように情報を出せていく。

キャラクター同士の恋愛に関してはまだ始まってもいない段階なのであまり言うことはないが、それぞれの特徴が強く出ており、魅力的且つ読んでいて誰が誰だかわからないようになっている。

総じてレベルの高い、謎が多い設定も含めて彼等の今後がどうなっていくのか気になるSFミステリー小説。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?