Web小説発掘記 その271 ぬきさしならへんっ! 作者 夢野咲コ様
本編URL
https://estar.jp/novels/26196000
前書き
この記事は作品のネタバレを含みますのでご注意。
こちらの記事はあくまでも筆者の個人的意見です。
評価の基準としては200円~700円前後の書籍を購入し、読んだものとして付けさせていただきます。そのため基本的には厳しめとなります。
あらすじ
映画のようなかっこいいヤクザの世界を夢見て、大阪から上京してきたちょっとおバカな青年、早坂庄助(はやさか しょうすけ)は、美形だけど風変わりな先輩ヤクザの遠藤景虎(えんどう かげとら)とルームシェアすることに。
ある出来事がきっかけで、庄助は景虎に無理矢理手籠めにされてしまう。
嫌なのに、屈辱なはずなのに、死ぬほど気持ちいい……! 犯されて蕩かされて噛みつかれて果てて。
ケモノみたいなセックスに、身も心も尊厳もドロドロっ♡ 凸凹猛獣コンビが織りなす、クスッと笑えてちょっぴりアングラな、ぬきさしならないヤクザ・エロコメディ開帳!
ストーリーと見所
無口系イケメン先輩ヤクザ×小動物系(?)関西弁ヤクザ見習いの濃厚BL小説。
どうでもいいけど女性向けってヤクザとかマフィアを題材にした作品多くない……?やはり悪というのは魅力的ということなのだろうか……。
勿論BL作品ということはメインのターゲットは女性向けなので、ヤクザとはいえ割と小奇麗な空気感。
とはいっても常に平和というわけではなく、会話の所々に出てくる単語は普通に物騒だし、暴力描写もそれなりにある。
そもそも最初に二人が関係を持つくだりが若干無理矢理気味と、そこまでハードではないがそういった部分がいいアクセントとして機能している。
ヤクザに憧れる青年が、イケメンだけど感情の起伏が少なく何を考えているのかわからない人物とルームシェアをして、時には身体を重ねながらも最終的にはいいコンビとなり相棒になっていくというのが主なストーリー。
とはいえまぁ、こちらの作品いい意味で語ることがあまりなく、作品としてはかなり完成度が高いものとなっている。
ヤクザにしては少しフレンドリーというか、ほんわかし過ぎな感じもなくはないが、こちらの作品の本懐は二人のカップル(?)を見守るBL作品なので、むしろその辺りのソフトな導入が逆にありがたい。
上手いところで作品の雰囲気を、早めに読者に伝えているのはむしろ見事な点といえるだろう。
肝心の濡れ場描写に関してもそれなりの尺が割かれている上にいい感じにねっとりとしており、BLについては正直あまり詳しくはないのだが、かなり読み応えのあるものになっているのではないだろうか。
登場人物も、他のキャラクターこそ少しは出てくるもののメインとなる二人から焦点がブレないので話も分かりやすい。
そしてちょっとした過去の回想が入ることで、攻めが受けに対して強い興味を抱いた理由が補完されていたりとキャラクターの解像度が高く、二人の関係が無理ないものとして描かれている。
終盤の盛り上がる場面でも、しっかりと読者が望んでいる展開を描いてくれたのもとても良き。
全体的な雰囲気は柔らかめだが、割と暴力的な描写や裏社会の住人であることを匂わせるようなやり取りもあるなど、舞台背景が鮮明なのも読んでいて作品への没入度を高めてくれている。
キャラクター
早坂庄助
所謂受け。
関西弁を喋り、頭に血が上りやすい。
一応喧嘩は強いらしい。
ヤクザ映画で憧れを覚え、極道の世界に足を踏み入れるなど行動力が凄まじい。
また反社とはいえど老人を騙すような輩には強い怒りを覚えるなど、そういう世界の住人なりの正義感を持っている辺りが好感が持てる人物。
遠藤景虎
所謂攻め。
イケメン、腕っぷしが強い。
作中でも言われているが、割と不思議ちゃん的な性格。
言葉数こそ少ないものの妙に芯を付いたような物言いが多く、そういったところが印象に残る。
平常時は何処かぼうっとしているが、ベッドの中ではかなりSっぽくなるのも好きな人は好きそうな要素である。
総評
評価点
文章はとても読みやすく、描写と心情のバランスがいい。
何よりもストーリーにちゃんと緩急があり、二人の関係が深まるようなエピソードやちょっとした日常、そこに過去話がちょうどいいぐらいの長さで入ってくるので読んでいて飽きがこない。
濡れ場のシーンもそれなりの分量と濃度があり、そちらを目当てにする分にも充分に満足できることだろう。
お話の長さ的にもちゃんと二人のメインキャラクターから焦点がズレず、そこをしっかりと書き切ってくれているのも個人的には評価点。
問題点
……まぁ、特にないかなぁ。
一応濡れ場ありのBLだから若干人を選ぶとか……?
最終評価 57点(Web小説としては充分な良作)
作品の中にやりたいことがしっかりとまとめられた良作小説。
BLとしてはかなり濃いめの濡れ場があり、それを楽しむこともできるし、それ以外にもメインとなる二人のやり取りやキャラクター性だけでも充分に魅力的な作品として完成されている。
文章力や表現力、ちょっとした台詞のセンスからの作者さんの高い技量を伺うことができるとても完成度の高い小説。
所要時間は外伝部分を飛ばして凡そ30分ほど。
極めて個人的な感想
BL作品はあまり詳しくはないけど、しっかりとまとまったとてもいい作品。
濡れ場の分量がそれなりにあって、そこでの二人の関係性などもちゃんと鮮明に書かれているのもいい感じ。
上にも書いたけど、特に良かった点は二人に対するフォーカスが最後まで全くズレなかったこと。
それで作品にちゃんと芯が通っていて、一つの物語としての完成度が高まっているし、今後続ける分にもちょうどいい第一話になっていると思う。
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