しいたけ賞(仮)その21 Haphazard Fantasy ~エイルの不思議な冒険~ 作者 加藤大樹様

本編URL

https://kakuyomu.jp/works/16817330650090906289

前書き

この記事は作品のネタバレを含みますのでご注意。
こちらの記事はあくまでも筆者の個人的感想です。
例えそのような内容であろうと、作品の価値を定めるようなものではないことは予めご了承ください。

あらすじ

 愛と勇気に育まれた少年、エイル・ノルデンは幸せな日々を過ごしていた。
 ある日、十一歳の誕生日を迎えた彼は、父親と共に狩りに出かける。しかしその帰りに、エイルは不慮の事故に遭ってしまう。それが、少年の過酷な運命の幕開けだった――。
 少年よ、理不尽に抗い続けろ。

ストーリーとかについて

美しい文章で彩られる、不思議な雰囲気のファンタジー小説。

特徴として一番に述べたいのはやはり、その文章の美しさだろう。
丁寧に書かれた文章はキャラクターの動作やその場の情景をくっきりと綺麗に浮かび上がらせて、ちょっとした場面ですら強く印象付けることに成功している。

そういった部分もあってか、序盤からの展開は割と丁寧なものであるが読んでいて退屈することはなく冗長に感じられることはない。
会話のやりとりから自然に世界観を説明することもできており、上にも書いた文章力……描写力と合わさって読んでいて世界観への没入度も高い。

ストーリーとしては一人の主人公に降りかかった理不尽から始まるファンタジーと言った感じではある。

物語の方向性が下読み時点ではどうにも掴めないのが気になるところではあるが、散見される部分から恐らくはバトルがメインとなっていくようなものといって間違いないだろう。

物語の始まりもやや唐突感こそあるが、その辺りもいい味になっている。まさにキャッチコピーやあらすじに偽りなしの絶望や理不尽が主人公に襲い掛かる。

だからといってただ一方的にいたぶられるわけではなく、頼れる友人との協力や未知の力への目覚めなど、少年漫画的なテイストも多分に盛り込まれており、読んでいる読者を飽きさせない展開もまた良き。

キャラクターとかについて

まだ序盤ではあるが、キャラクターの解像度は高い
大きな特徴があるとはいえないが、それこそしっかりとした描写やちょっとした心情から、どういった人物であるのかが把握できるようになっているのは大きい。

最終評価(極めて個人的な感想)

文章

かなり上手い。
丁寧な描写や心情を挟みながらも、決して冗長にならない程よいテンポなど、かなりしっかりとしている。

キャラクター

キャラクターの書き分けはちゃんとできている。
途中から主人公の影が薄くなっているのが少しばかり気になるところ。

この辺りは単純にダブル主人公かもしくは群像劇的なお話である可能性もあるので何とも言えないが。

構成

若干展開に唐突感というか、無理矢理感があるのが気になるところ。
大きな問題というほどではないので、敢えて気になる点を語るのなら……ではあるが。

今後の伏線である可能性もあるので何とも言えないので、あくまでも現状ではといったところ。

設定

物語に合わせて上手く開示されており、その所々で垣間見える部分から異世界ファンタジーのワクワク感が上手く伝わってくる。

総評

丁寧な展開と、美しい文章に彩られる重厚なファンタジー小説。

世界観や主人公に訪れる試練を見てもこの物語が一筋縄ではいかないものであることが容易に見て取れ、だからこそ続きが気になるような作品となっている。

作品として特筆したいのはやはりその描写力だが、幾つも降りかかる試練とそれらを跳ねのけて進む主人公達の軌跡も充分な作品の見所として成り立っている。

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