Web小説発掘記 その159 評価『Fランク』の少年、実は裏では世界最強の能力者 作者 天野月影様
本編URL
https://kakuyomu.jp/works/16817330648421274794
前書き
この記事は作品のネタバレを含みますのでご注意。
こちらの記事はあくまでも筆者の個人的意見です。
評価の基準としては200円~700円前後の書籍を購入し、読んだものとして付けさせていただきます。そのため基本的には厳しめとなります。
あらすじ
日本にある、能力者だけの都市――『第三都市』
都心四区と副都心三区の全てが第三都市として使われており、その最大の特徴は『住人の殆どが能力者』であること。
能力者たちは「F」~「SSS」というランクにランク付けされており、強い能力者には好待遇を、弱い能力者は虐げられていた。
その都市内で起こる能力者による犯罪を未然に防ぐ為に作られた組織――警察庁公安部『異能課』に所属する、十六歳の少年 神代御幸。
彼は史上初の最弱の能力者であるランク『F』の称号を持つ能力者であった。
だが、同時に彼は裏の世界で『世界最強の能力者』とも恐れられていた。
ニコチンジジィ、引きこもり少女、ラノベ作家、ツンデレ幼馴染……個性が強すぎる『異能課』の仲間と共に、非日常過ぎる日常を謳歌する、少しダーク寄りの現代ファンタジー。
ストーリーと見所
あらすじから伝わってくる全力中二病小説感が眩しいラノベ系小説。勿論いい意味でね。
能力者、ランク、主人公は弱いと言われてるけど実は最強。
ツンデレヒロイン、異能者組織などなど、筆者が14歳であったら噛り付いて読んでいただろうし何なら作者さんにファンレターを送っていたであろうことは想像に難くないほどの厨二要素が盛り込まれている。
内容としてもあらすじから読み取れる内容がそのままお出しされてくる。
カレー屋に行ってカレー頼んだらカレーが出てきたような話だ。
読者が読みたいと思ったものがそのまま的確に出てきてくれるありがたさと喜びを存分に感じることができる。
物語としては能力者が自然にいる世界、能力者だけが住まう街で繰り広げられる能力バトルと言った感じのお話。
登場人物に関しても実にラノベラノベしていて内臓に優しい。
ストーリーも主人公を侮る敵を爽快に倒して見せた後は強敵に苦戦し、そのうえで信念を貫き勝利と実に王道を突っ走ってくれている。
読んでいて実に気持ちがいい物語と言っていいだろう。個人的には主人公があくまでも相手を救うことを目的としているのも好みだった。
ダーク系ではあるが、決して残酷ではない。程よく日常シーンやラブコメのような場面が挟まれて、適度に空気を入れ替えてくれるので暗いのが苦手な人でも安心できるだろう。
昔懐かしのラノベに、近代の主人公が最強要素を付け加えたようなハイブリットライトノベルと言った感じだ。
……と、まぁそれなりに褒めてはみたし実際にそれなりに面白い作品ではあるもののそこそこに問題もあったりする。
なんと言うか、物語が絶妙に噛み合っていないような気がしないでもない。
恐らくは続き物の一章と言った感じで書かれているから仕方がない部分もあるのだろうが、作品単体で見れば些か消化不良感は否めない。
各能力の説明やそれ以外の様々な設定部分など、読んでいて少しばかり疑問に思うことが多かったのは事実。
キャラクター
神代御幸
物語の主人公。
評価Fランクの能力者なのだが裏の世界では最強として恐れられているとのこと。
それに関しては別にいいのだが、能力がふんわりとしている。
使い過ぎると暴走したりしてよくないらしいが取ってつけた感が否めない。
こう言っちゃなんだが最強主人公にしたいのか、それなりに苦戦しつつ勝利する主人公にしたいのかどっちつかずな印象を受けた。
性格としては基本的にクールだが適度に熱血だったり難聴したり鈍感だったりと、かなりラノベ主人公をしている。
その手のキャラクターが好きな人ならば刺さることは間違いないだろう。
相手を殺さず、悪人であっても救う信念を持ち続けたのは素直に格好良かった。
アリシア・エーデルハルト
ヒロイン的なポジション。
ツンデレっぽい性格。
氷の能力を操る。
高屋敷澪
ボクっ子だあああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!
しかもダウナー系ボクっ子だああああぁぁぁぁぁ!!
しかし出番はあまりない。
残念無念。
総評
評価点
王道を貫く能力者系のライトノベル。
物語としてはあらすじを読んで期待したものがそのまま出てくると思っておいて間違いはない。
期待を裏切られることもなく、熱いシーンや可愛いヒロインを見ることもできる。そして何よりもボクっ子もいる。
特に主人公のキャラクターはクールでありながら何処か愛嬌があり、信念を持ち続けているため好感が持ている。
問題点
こう……なんと言うか、全体的にふんわりとしている。
設定にしてもキャラクターの主張にしても、状況にしても何処かふわふわしていて地に足がついていない。
嫌な言い方をするのならば何処かで見た話を雑に繋げているような感じ。
他の仲間達もヒロイン以外はなんか出てきたと思ったらいつの間にか消えていた感じが否めない。
続編がある場合は仕方がない部分もあるのだろうが、こちらの作品単体で見ると消化不良感が強い。
最終評価 55点(Web小説としては充分に良作)
まあ問題点に色々書いたが、それらが読むにあたって大きな問題かと問われるとそれほどでもない。
物語としてはちゃんとできているし、何度も書いてある通り読者が欲しいものを美味しく料理して提供してくれている。
主人公は魅力的だし、ヒロインも可愛らしい。キャラクターも続編などで出番があると考えれば顔見世程度の部分もあるのだろう。
実際続編があるのならば、他のキャラクターの活躍や世界観がどう掘り下げられていくのかが実に楽しみではある。
読んでいて思わず心が熱くなるような王道の物語。能力バトルものが好きな人ならば読んで間違いのない小説だろう。
所要時間は凡そ1時間ほど。
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