しいたけ賞(仮)短編部門 その5 自分の体を代償にガチャを回せる神ゲー 作者 哀原愛様

本編URL

https://kakuyomu.jp/works/16817330657433013045

前書き

この記事は作品のネタバレを含みますのでご注意。
こちらの記事はあくまでも筆者の個人的感想です。
例えそのような内容であろうと、作品の価値を定めるようなものではないことは予めご了承ください。

あらすじ

ある日、スマホにインストールされた謎のゲームアプリ【サクリファイスデビル】。ゲーム内コインを肉体・霊魂を代償に購入できるそのゲームに嵌った主人公の人生は段々と取り返しのつかないものになっていく。

ストーリーとかについて

オタクでソシャゲ廃人な主人公。
友人からの善意の言葉も聞き流しながらソシャゲにハマり課金を続けた彼は、とあるゲームに導かれる。

余りのクオリティを誇るそのゲームにのめり込むが、そのガチャを回す代償はお金ではなく……といった感じのコメディ風ホラー小説。

作品としての評価を手っ取り早くいうと、正直なところかなり面白い。
ストーリーの導線や、作者さんのやりたいこともきっちりと表現されており、その上で誤魔化さずしっかりと因果応報的なラストを迎える。

わかりやすく面白い、そしてちょっと考えさせられる。
基礎的な部分の造り込みがしっかりとした、優良短編小説。

キャラクターとかについて

この小説の面白さの大部分は、キャラクター造形の見事さにあるといっていいだろう。
主人公はまぁ、言ってしまえばかなりどうしようもない奴なのだが、彼の語る言葉が程よくキモくてイラっとする(誉め言葉)。
反面ちょっとだけ愛嬌というか、笑える部分もあったりと微妙に憎み切れないのもいい塩梅。
勿論作者はそのように書いているのであろうから、かなり成功している。

最終評価(極めて個人的な感想)

文章

かなり読みやすい。
主人公の台詞が無駄に長かったり、言葉選びなどでもちゃんと個性が表現されているのは上手い。

キャラクター

上にも書いた通り、かなり上手い。
適度にムカつき、キモい。
なのだが物語のラストを考えると程よく可哀想になるといういい塩梅のキャラクター性が、上手く読後感を演出している。
ちょっとしか出てこないが、母親の台詞がブラックで面白い。

構成

物語の作りとしてはかなりシンプルでわかりやすい。
主人公のキャラクターや作品のテーマをより明瞭にしている見事な構成。

設定

ソシャゲ廃人の主人公と、それに対して冷めて距離を置く友人、そして更にハマっていく主人公などその辺りの嫌なリアリティが上手く表現できている。

総評

短編なのでするっと読めて、程よく何とも言えない気分(いい意味で)にさせてくれる優良短編小説。

喜劇でもあり同時に悲劇でもあるので、どちらの視点で見ても楽しめる。
程よい読後感がとても魅力で、短編ながら読み終わった後の満足感は大きい。

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