しいたけ賞(仮)その34 騎士と戦乙女が真の儀式を演じるまで 作者 山野げっ歯類様

本編URL(リンク先R18注意)

https://novel18.syosetu.com/n7364ig/

前書き

この記事は作品のネタバレを含みますのでご注意。
こちらの記事はあくまでも筆者の個人的感想です。
例えそのような内容であろうと、作品の価値を定めるようなものではないことは予めご了承ください。

あらすじ

「生まれた性を間違え、戦場に立てば皆が私のために死んでいく。それでもまだ私に生きろというのか!」

【名門家当主のスパダリ騎士×「戦乙女」と崇められる健気不憫な青年】

戦場に降臨すれば勝利をもたらすと言われる現神「戦乙女(ヴァルキリー)」が崇拝されている国家・ニーベルンゲン。同国との戦争に従軍した帝国名門家の騎士・シグルズは敵本陣で戦乙女・ネフィリムと出会う。

この物語は、
大切な人を失う恐怖に怯える騎士と、
体を捧げる行為でしか価値を見出せなかった戦乙女が、
お互いを救済するようになるまでのお話です。

ストーリーとかについて

イケメンと強くて頭も回る騎士×戦乙女と呼ばれた不憫な青年。
その二人の絆に焦点をあてたファンタジーBL小説。

骨太のファンタジーをしながら、濃いめの性描写もあるなど多方面に隙がない作品。

とはいえ、BL作品としてのがっつりとした濡れ場を書きつつも、ファンタジー小説としての面白さにも全く手を抜いていない。

舞台となる世界観や、各国の状況。主人公とヒロインの立場などが物語中できっちりと詳しく書かれているので、作品としての完成度も高い。
一筋縄ではないかない、少しばかり血生臭い世界を誤魔化さずに描写しているからこそ、二人の関係や今後の展開が気になるものとなっている。

総じてストーリー物としても、BL作品としてもクオリティが高い作品といっていいだろう。

実際のところはストーリーの要所に濡れ場が入るといった感じで、それ自体はやや少なめなのかも知れないが、所謂女性向け作品の「そういった場面」の適量を筆者は知らないので……。

キャラクターとかについて

メインとなる登場人物は、どちらもかなり丁寧に書かれている。
特に両方の台詞回しが秀逸で、そこからどういった人物であるかがはっきりと見て取れる。

最終評価(極めて個人的な感想)

文章

全体的に上手い。
字の文と台詞のバランスがよく、特に世界観に関しては台詞と字の文を組み合わせて、キャラクターの性格を見せながら上手く説明している。

また特筆するべき点としては台詞回しがあげられる。
キャラクターを上手に表現できており、少ない分量でどういった人物であるかを読者に見事に伝えることに成功している。

キャラクター

下読みの段階で、どういった人物なのかが上手く表現されている。
所謂ぶっ飛んだキャラ付けなどではないが、丁寧で好感が持てるキャラクターの書き方。

構成

最序盤ということもあってか、やったことは世界観とメインキャラクターの解説。
ではあるのだが、エピソードを盛り込んでそれを語ることで、飽きずに読み進められるようになっている。

設定

濃いめの世界観に、成人向け漫画のような設定。
それらが違和感なく組み合わさっており、壮大でありながら官能的な独特の作品世界を構成することに成功している。

総評

全体を通してクオリティが高いファンタジー小説。

ファンタジーとして読んでもかなりの読み応えがあり、二人の関係やこの先の物語の行方などが気になってくる。
個人的に特に気に入ったのは台詞回しで、キャラクター同士の掛け合いや主人公の一言から、作品の個性を際立たせるのに一役買っている。

BL作品として見る分には正直ちょっとわからないが……(BLは嗜まないので)
文章の表現が上手く、争いの中で絆を紡ぐ二人の関係というのは少なくとも男女のそれに置き換えてもかなり盛り上がる内容なのではないのだろうか。



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