Web小説発掘記 その267 虫食う家 作者 遠藤ほうり様

本編URL

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=21822677

前書き

この記事は作品のネタバレを含みますのでご注意。
こちらの記事はあくまでも筆者の個人的意見です。
評価の基準としては200円~700円前後の書籍を購入し、読んだものとして付けさせていただきます。そのため基本的には厳しめとなります。

あらすじ

以前書いた「生活に寄り添った新技術SF」の掌編です。

ストーリーと見所

益虫を買う世界線……?のちょっとしたSF掌編。

物語は二人の人物の会話劇を中心に語られていく。
タイトルからしてなんかホラーっぽいイメージがあるかも知れないが、こちらは安心安全のどちらかといえばほのぼのとした二人のやり取りが魅力的な物語。

話を読んでいくと次第にわかっていくのが、この世界はどうやら『虫』を買うことがそれほど珍しいわけではなくなっている模様。
勿論カブトムシとかそういうのではなく、どちらかといえば人に嫌悪感を持たれがちなあれこれ。

現実でも食用コオロギが話題になったりする昨今、虫の力というのは何かと注目を集めているので、その延長線上と思えばそれほど想像しにくい話でもない。
(そういえばコオロギ騒動って何処に消えたんだろ……?)

どうでもいい話だが、筆者は生ごみを土に埋めてなんか色々やってバクテリアやらに分解してもらう動画が好きだ。

そんなリサイクルが流行っている世界ということなのだろう。
実際に作中でも、生ごみは虫に食べさせれば燃料になるといった発言がある。

なのだが、そのために鮭の皮が好物の人がいるのに捨てようとするのは何とも本末転倒で、その辺りの何とも言えない感じもまた妙なリアリティがあって作品世界を上手く表せているといえるだろう。

キャラクター

各務

主人公。

物語は彼女(多分)の視点で語られる。
相方には若干辟易しつつも、優しく見守っている雰囲気が出ていてその辺りもとても良き。

鮭が好物。

雛咲

ヒロイン……?
どうやら各務とは一緒に住んでいるようで、会話からも二人の気心を知れた仲が伝わってくる。

バイオ燃料のために虫を飼いながらも虫は嫌いで、ほんの僅かな節約のために鮭の皮を取り上げようとするなど多少考えなしというかそういう部分が見えるのだが、その辺りもまた彼女の魅力なのだろう。

総評

評価点

オチがいい。
独特の文章表現は、世界観にぐっと引き込まれる。

虫が生ごみを分解して燃料にする世界というのも、ユニークでありながらそのうちにやってきそうな未来を彷彿とさせる、SFとしての面白さもしっかりと読み取ることができる。

特にヒロインの有用なものだからと虫を可愛がりつつも、その姿には嫌悪感を抱く身勝手さはなかなか上手い表現となっている。

問題点

特にない……?
敢えて言うなら、文章はもう少しスッキリしていた方が本題が伝わりやすいかも。

最終評価 53点(Web小説としては充分な良作)

ちょっと先の、ありそうな未来を語ってくれる変わり種SF小説。

独特の表現力は読み手を引き込む力があり、キャラクター同士の会話の節々から、二人の関係性が伝わってくるのも実に上手い。

世界観も面白く、ひょっとしたら我々もエネルギーのために虫を飼う日が来るのかも知れない……。

所要時間は凡そ5分。

極めて個人的な感想

色々と魅力的な描写や表現が多く、特に二人のやり取りのふんわり感が実に良き。
文章のごっちゃり感が気にはなるのだが、とはいえそれが魅力の小説ともいえるので難しいところである……。
とにかく深みのある表現が心に刺さってくれる。


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