渡り廊下の扉の裏側。
小学3年生の夏休み前の最後の日。
学校で大掃除がありました。
小学1年生から6年生までが集まっての掃除です。
渡り廊下からその先にある音楽室までの掃除をしていました。
私は、屋外に面している渡り廊下担当。
ほうきで廊下を掃いている時でした。
音楽室の手前には大きく重い防火扉のようなものがあり、
普段は常に開かれた状態でロックされているのですが、
その扉がゆっくりと閉まっていくような感覚があり、扉の方を見ました。
扉は変わらず開いていて、いつも通りドアの下でロックされていました。
今の感覚は何だったんだろう?
不思議に思いながらも、そこまで気に留めずそのまま掃除を続けました。
ほうきで音楽室の方に少しずつ掃き進めていくと、
”ドン‼”
今度は扉を誰かが強く拳で叩いたような音。
私は驚いて顔を上げましたが、扉の近くには誰もおらず、
周りの子達には聞こえていない様子でした。
掃除が終わりに近づいた頃、上の学年の女の子が私にこう言いました。
「ここの場所って幽霊が出るんだって。知ってた?」
えっ⁈幽霊?
その話を聞いた私は、少し前に聞いた音や感覚がもしかしたら…
と急に怖くなりその場から離れました。
話してくれた女の子には何も言わず。
突然いなくなった私を6年生が探しに来てくれましたが、
結局私は戻れませんでした。
理由も言わず戻らないなんて迎えに来てくれた6年生は困ったでしょうね…
ごめんなさい。
ガヤガヤとした教室に戻り、席について一人考えていると
友達が話しかけてくれました。
「放課後ちょっとだけ残ってあそぼ!」
放課後、数人の友達と廊下で楽しく話していました。
掃除の時の出来事を忘れて。
しばらくしてトイレに行こうということになり皆で向かっている時です。
急にあの出来事を思い出し、トイレに続く廊下の角を
曲がれなくなったんです。
そこは、音楽室に続く渡り廊下のある方向だったから。
立ち止まった私の両腕を友達に引っ張られるような形で
トイレに向かいました。
何事もなくトイレに到着し、
先に済ませた私と友達で残りの友達を待っている時でした。
”ドンドン‼”
また、扉を叩く音がしたのです。
それも、体に振動が伝わる程の尋常じゃない大きさで。
私「何、今の⁇」
友「え、なにが?」
聞こえないはずがないほどの重みのある大きな音だったのにも関わらず、
聞こえたのは私だけのようでした。
友達に聞こえた音の説明をすると、
「その音が何だったか気になるから見に行こう。」ということになり、
トイレから出てきた友達も連れて
音の鳴った方へ向かっていきました。
渡り廊下を横一列に腕を組みながら。
廊下の先の扉は閉まっていました。
放課後なので用務員さんが施錠したのでしょう。
私は、さっきの音は確かにこの扉を叩く音だった。と感じました。
すると、一番左端で腕を組んでいた友達が
「皆ちょっと見て!」
と興奮気味に叫びました。
その子が指さしていたのは、閉じられた扉の左下。
普段、扉が開いている時は、
扉で隠れて完全に見えない位置でした。
普段見ることのないその場所を見てみると
そこにはバラバラに置かれた木くずのようなものがありました。
よく見てみると、近くに卵が3つ転がっており、
この木の残骸が鳩の巣だということに気づきました。
3つの卵のうちの2つは割れていて、中には雛らしきものが見えましたが、
どちらも真っ黒になっていて明らかに死んでいるとわかりました。
当時の私の感覚では、この鳩の巣を人間が故意に壊し、
踏み荒らしたようなあまりにも酷い状態でした。
母鳥はおらず、無知だった私達は残った一つの卵を順番に持ち帰り
暖めるという方法を選んでしまいました。
数週間しても雛は孵らず、卵からは異臭がするようになりました。
そうです。
すでに死んでしまっていたのです。
それを悟った私達は公園に卵を埋めに行きました。
あの時私達はどうしたらよかったのか。
正解は分かりません。
無知な子供が持ち帰ってはいけなかったのは明らかですが
あの時は、そこに置いていく事が罪だと皆感じたんでしょう。
振り返ると、私が恐怖だと感じた出来事。
扉が閉まる感覚と扉を強く叩く音。
それは、扉が閉まる放課後のあの時間、
私たちがあの場所に行かなければ見つからなかった鳩の巣と
残った卵を見つける為だったのかもしれないと
思えるようになりました。
幽霊だと怖がりあのまま逃げていたら
長い長い夏休みに入り
誰もあの巣と卵を見つけてあげられなかったかもしれません。
私の感じた全てはここまでです。
ここからは私も気づけなかった事柄についてお話ししたいと思います。
この記事を娘に読んでもらいました。
振り返り記事を書いていると
幼い頃、私が不思議な体験をしながらも親には話せなかった記憶があり
もしかしたら娘も私と同じ様に話せない事が
あったのかもしれないと思ったからです。
今までの不可解な出来事のいくつかは話していましたが、
このように形に残すにあたり、
娘がこれを読んでどう感じるのか興味がありました。
この記事を読み終えた娘からは、
私の想像もしていなかった感想を聞く事となりました。
それは…
あの時私が感じた事柄の全ては、
起きていたであろう出来事の全てだったのではないかという事。
扉が閉まる感覚=扉が閉められ、何者かに鳩の巣が見つけられた瞬間(?)
扉を強く叩く音=見つけた巣を壊す時に扉に拳が当たった音(?)
ではないか。と。
娘に言われるまでその感覚はなかったのですが、
娘の言葉の意味を理解できた時涙が出ました。
とても恐ろしかったんです。
そしてそれに違いないと思えたんです。
だからあの時、人が故意に巣を荒らしたと、
小3という幼さながら感じたのではないか。
大人になった自分が過去をさかのぼり今になって
あの時の感覚がこれに違いないと思えた事。
これから残していく出来事に自分の想像を超える真実が
潜んでいるのではないかと怖い気持ちでいます。
恐怖心が大事なものを見えなくさせてしまうのかもしれないと
大人になった今、この記事を書きながら改めて感じます。
最後まで読んで頂き有難うございました。
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