連載小説　奪われし者の強き刃　　　　　　　　第3章10話　「出現　西の八部鬼衆」

八部鬼衆の襲来から2日後、李兄妹は対策を講じるべく副師団長を交えて会議をしていた。

　李：
　「それじゃア林杏。八部鬼衆二会った時ノ事を教えてクレ。」

　林杏：
　「えぇ、まずは農村に行った時のことからね。」

それから林杏は八部鬼衆にあった時のことを時折、冥々の証言も添えながら事細かに話した。

　林杏：
　「以上が八部鬼衆に遭遇した時のことから奴らが撤退するまでのことの報告よ。正直、未知数を言わざるを得ないわ。戦ったのもほんの数分だけだったし、すぐに帰っていったし。」

　李：
　「そうカ。」

　冥々：
　「あの林杏師団長。八部鬼衆は東部の現れた四門のような立ち位置なのでしょうか。」

　林杏：
　「いや、恐らくは四門より立ち位置的には低いと思うわ。四門は陸王の直属の眷属だったけど八部鬼衆は空王の直属ではなくて四天王の直属って言ってたからね。」

　李：
　「つまリ、空王の他二12体もの強力ナ魔物を倒さないトいけないトいうことカ。」

　林杏：
　「そういうことになるわね。一応、総司令には報告済みだけどできるだけ私たちで対応できるところは対応しましょう。」

　峯風：
　「あの一ついいですか？」

そう言って手を挙げたのは第7師団副師団長の峯風（フォンファン）。オッドアイが特徴の男性で薙刀の達人。薙刀の腕は悠も認めているほどであるが、ネガティブ思考が玉に瑕である。

　峯風：
　「他の所の師団長に応援要請するのはよくないのでしょうか？相手の力が未知数な以上、自分たちで対応するのも限度があるかと。」

　林杏：
　「確かにそうだけど。」

　李：
　「他の所モこちらに応援二来るとなるト持ち場の守りガおろそか二なる。それ二、東部以外ノ地域は1人デ守るのハかなり厳しい。東部も今、悠ガ領地調査に行っているから涼介１人だしナ。」

　林杏：
　「とりあえず、対応は私たちだけで何とかするしかないわね。後は、団員をできるだけ今より範囲を広く配置しましょう。今回みたいに農村や山奥とかに出現されたら対応が遅れるから。」

　李：
　「そうだナ。そうしヨウ。峯風、お前の隊と数組の隊デ西部側を幅広く見てクレ。」

　峯風：
　「は、はいわかりました。」

　林杏：
　「冥々は南部側をお願い。」

　冥々：
　「はい、かしこまりました。」

　冥々：
　「ほら行くわよ、峯風。」

　峯風：
　「ちょっと耳を引っ張らないでくださいよ。ちゃんと行きますから。」

冥々と峯風は会議室を後にした。冥々たちは退室した後、李も徐に立ち上がった。

　林杏：
　「もう行くの兄さん？」

　李：
　「あぁ、八部鬼衆二ついてノ伝承ガないカ調べてミル。」

　林杏：
　「了解、私は東部の方の調査に行ってくるわ。」

　李：
　「あぁ、わかっタ。」

それから少しして、峯風が西部に到着した。

　峯風：
　「それじゃあみんな、とりあえずこのあたりを警戒しておこう。二人一組で範囲を広げて、何かあったらすぐさま連絡するってことで。散開。」

　隊員：
　「はい。」

隊員たちが散り散りになったのを確認した峯風は自身も周辺の警戒に当たった。

　峯風：
　「はぁ、本当に嫌だな。これから強い敵がいっぱい来るなんて、俺なんかに守れるわけないのに。」

　隊員：
　「またそんなネガティブなこと言って。他の隊員に聞かれたらどうするんだよ。あと、お前は十分強いんだから自信持てよ。」

　峯風：
　「今は俺とお前しかいないんだからいいだろ雲嵐（ウンラン）。」

雲嵐は峯風の幼馴染であり、峯風の隊の副隊長である人物だ。いつも弱気な発言をする峯風を支える縁の下の力持ち的な存在だ。

　雲嵐：
　「よくない。お前がその地位に着いたときに覚悟は決まったはずだ。完全になくせとは言わんが場所はわきまえろ。」

　峯風：
　「相変わらず手厳しいな。」

　雲嵐：
　「お前がもうちょいちゃんとしてくれたら手厳しく言わなくてもいいんだがな。」

そんな軽口を言い合っていると、峯風のいる西部に警報が鳴り響いた。

　雲嵐：
　「霧の場所と敵の数は？」

　オペレーター：
　「敵の数は2体。恐らく、八部鬼衆と思われます。場所は副師団長達の位置から500mほど西側に森林です。」

　峯風：
　「わかった。俺たちが行くから他の隊員は近くに人がいないかの確認と周辺の警戒を逃げ遅れた人がいたらすぐに避難するよう伝えてくれ。」

　オペレーター：
　「かしこまりました。」

　峯風：
　「行くぞ。」

　雲嵐：
　「あぁ。」

2人が走って数分、霧の前に到着した。霧の中から下半身が蛇の姿をした人型とがりがりのおじさんのような姿をした魔物が現れた。