連載小説 奪われし者の強き刃 第3章17話 「束の間 戦いの予兆」
悠たちが陸王領地の調査から帰ってきてから数時間後。日も登り切っていたが、いまだに悠は起きてこなかった。
直哉:
「おはよう。あれ?師団長はまだ起きてないの?」
彩音:
「おはようございます直哉さん。ここに来てないのでまだ仮眠室にいると思いますよ。様子でも見に行きますか?」
直哉:
「そうだな。」
彩音:
「では、私も行きます。ちょっとの間お願いね。モモちゃん。」
モモ:
「はい。行ってらしゃいませ。」
彩音と直哉は悠が寝ている仮眠室へ向かった。
直哉:
「それにしてもよく師団長を寝かせたな。どうせ、大丈夫とか言って寝ようとしなかったろ。」
彩音:
「正解です。だから、オペレーター室から追い出して無理やりにでも仮眠室に行かせました。あの人は、何も言わなかったら寝ずに仕事し続けますからね。この前も、新しく入ってきた隊員やオペレーターに『師団長はいつも起きてますけどいつ寝てるのですか?』って聞かれましたよ。」
直哉:
「そういえば、俺もそれ聞かれたわ。こっちとしてもあんま無理しないでほしいんだけどな。」
そうこうしているうちに仮眠室に到着し、悠が寝ているベッドを見てみると、悠は夜行と抱き合って寝ていた。
彩音:
「ほんと。寝顔は相変わらず男の子って感じがしますね。幸せそうな顔してます。」
直哉:
「この絵面大丈夫か?夜行が怪しい人に見えるけど。」
彩音:
「流石に変なことはしてないでしょう。師団長を起こしますか?」
直哉:
「そうだな。頼む。」
彩音が優しく悠を揺さぶると、悠は直ぐに目を覚まし起き上がった。
悠:
「おはよう。あれ?直哉もいる。」
直哉:
「おはようございます。検査の準備ができましたよ。」
悠:
「わかった。今行くよ。」
悠はベッドから起き上がり、伸びてから直哉とともに自室へと向かった。
彩音:
「夜行、起きてるでしょ。」
夜行:
「あら、ばれちゃった。」
彩音:
「何がばれちゃったよ。あなたたちは寝ないでしょ。それで、師団長に変なことしてないでしょうね。」
夜行:
「してないわよ。一緒に寝れてかわいい寝顔が見れたのだから満足。」
彩音:
「そ、ならいいわ。」
悠は直哉とともに自室に戻ると、子供たちは未だに眠っていた。
直哉:
「この子たちが例の生き残りですね。確かにこれはかなりいじられてますね。」
美月:
「う、うーん。あっおはようございます。お兄さん。陽姫、夕影起きて。」
陽姫たちは眠たそうにまぶたを擦り、起き上がった。だんだんと目が覚めてきて直哉を見るや否や、子供たちはすぐさま悠の後ろに隠れた。
直哉:
「えー。俺ってそんなに怖いですかね。」
悠:
「大丈夫。このお兄さんは怖くないよ。俺の友人。今日は美月たちに大きな病気やけががないかこのお兄ちゃんに見てもらおう。」
陽姫:
「うん。わかった。」
陽姫たちは悠の後ろにべったりとついたまま、直哉についていき医務室へと向かった。一通り検査を終え、数時間時間を置いた後、直哉が検査結果を伝えに来た。
直哉:
「お待たせしました。子供たちは来てないのですか?」
悠:
「あぁ、とりあえず俺の部屋にいてもらってる。慣れない場所で疲れているだろうしな。」
直哉:
「わかりました。それでは検査結果をお伝えします。」
悠:
「あぁ、よろしく頼む。」
一方、千代は中央部に八部鬼衆が現れたことによる対応に追われていた。
千代:
「東部で魔物の襲来が減って安心してたのに。次は中央部で空王の眷属が現れるなんて。流石に、現地だけでの対応は厳しいだろうし、どうしよう。」
男性:
「失礼します。総司令、今よろしいですか?」
千代:
「雅(まさ)さん。どうかしましたか?」
千代の部屋に訪れた男性は真田雅信(さなだまさのぶ)。師団の副総司令を務めており、千代のスケジュール管理や経理などを担当している。
雅信:
「中央部に現れた八部鬼衆の件ですが、現地の師団長達からやはり応援が必要だという旨の連絡がありました。」
千代:
「やっぱりですか。では、悠は調査から戻ったばかりですから氷室さんに行ってもらいましょう。」
雅信:
「そのことなんですが、上層部は夜岸師団長を指名しています。『より強いほうが応援に行くのが当然だろう』と。総理は止めていたみたいですけど。」
千代:
「本当にあの人たちはあの子に何の恨みがあるのかしら。・・・まぁ決まったものはしょうがない。雅さん。第1に連絡してこれるタイミングでいいのでこちらに来ていただきくように悠に伝えてください。」
雅信:
「かしこまりました。では、失礼いたします。」
千代:
「はぁ。なんだか嫌な予感がするのよね。」
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