見出し画像

『心の友』 - With a Little Help from My Friends ジョー・コッカー

 今から3年前の夏に書いたブログ。
3年前も暑かった。というか、毎年毎年暑くなってきて、日本は熱帯地方になってしまったんだろうな。
台風も変な動きだしね。
2023年8月26日


 今年はコロナ一色の一年で、マスクに覆われた生活の中、花や草の香りが届かず季節感が全く感じられんよ。で、梅雨も7月いっぱい続き、1か月近くお天道様を拝めず、震えていたと思っていたら8月に入れば殺人的な暑さ。テレビからは「命を守る行動を!」「マスクなんてしていたら熱中症になります!」「エアコンはつけっぱなしで!」などと今までの常識を覆すアナウンスが連日報道される事態。
 さすがに40度までいくと、コロナどころではなくなるね。お盆の時期に死を意識した暑さとは何ぞやということだよ。日本はいつからサハラ砂漠のような暑さになったのだろうか、なんて言っていたら、ようやく処暑も過ぎ、暑さも下り坂になるとのこと。まぁただ、暑さは当面続くみたいだけどね。
 で、暑いときはロイヤルホストのカレーフェアじゃないけど、「暑い」じゃなくて、「熱い」音楽を聴きたくなるもんであります。もちろん、エアコンの効いた部屋でシャカタクのような(古い~)涼しげな音楽を聴くのもいいが、アタシは扇風機だけ回して熱風の中で冷えたビールを飲みながら暑っ苦しい音楽を聴くのが好きなんでありますよ。それはもう、ブルースやテナーサックスばりばりのジャズも大好物なんでありますが、オールマン・ブラザース・バンドやチャーリー・ダニエルズ・バンドのようなサザンロックがよろしいのであります。
 そんで、レコード棚をガサガサやってましたら、手に取ったジャケットを見て軽く叫びました!「あちぃ!こ、これだ!」ということで、ジョー・コッカーです。イギリス人ですが、アメリカのテキサス生まれみたいな人です。アタシは多分相当好きです。
 歌、上手いです。クルセイダースのアルバム「スタンディング・トール」(1981)の客演で歌った「明日への道標」なんてジョー・コッカーしか歌えませんよ。あの人、飲まなきゃいいんですけどね・・・。

 例えば、夏の風物詩である「愛は地球を救う」の24時間テレビの要請で1981年に代々木公園で雨の中でフリーコンサートやったり、映画「愛と青春の旅立ち」のテーマソングがヒットしたから日本に来てみたらめっちゃくちゃアル中で1時間も歌わず、袖に引っ込んでゲロ吐いて、そのまま日本公演を全部キャンセルしたという逸話を持ちます。アタシはその2回とも目の前で見ておりました。伝説のウッドストック参加シンガーがゲーゲーであります(そういえば、ウッドストックの時もきっと一発キメていたんでしょうな、千鳥足でしたし)。アタシはこの人好きです。で、このアルバムです。
 ジョー・コッカーのファーストアルバム。

『With a Little Help from My Friends』邦題「心の友」(1969)。いわずも知れたビートルズの曲であります。そう、このアルバム、ジョー・コッカーのオリジナルは10曲中3曲で、他は人の曲ばかり。しかもオリジナル曲の「マジョリーン」は歌の途中でフェードアウトしていくという妙なつくり。レコーディングエンジニアもラリっていたのでしょうか。
 アルバムタイトルのビートルズを筆頭に、デイブ・メイソンや、ボブ・ディラン。しかもディランは2曲もあり(「女の如く」と「アイ・シャル・ビー・リリースト」)、「アイ・シャル・ビー・リリースト」なんて前年にデビューしたザ・バンドのアルバム(アルバムの目玉だったんよ)の興奮も冷めやらぬ時期に歌っちゃうという暴挙。きっと俺の方が上手く歌ってやる!なんて感じでレコーディングしたんでしょうか。    
 また、アニマルズや後年にサンタエスメラルダで有名な「悲しき願い」というスタンダードポップスも得意の泣きのヴォーカルを唸らせております。日本では尾藤イサオがうたってましたな、関係ないけど・・・。
 ジョー・コッカーに戻します。このおじさんは、とにかくむせび泣くんです。タイトル曲の「ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンド」だって、リンゴ・スターの何も考えていなさそうな飄々としたヴォーカルだから「友達っていいねぇ~」なんて感じだけど、ジョー・コッカーが歌うと仰々しくなって「てめぇ、助けねぇと・・・わーってんだろうな!」みたいな感じになります。また、このアルバムで何曲か参加しているのが何故かジミー・ペイジ。アルバムタイトル曲もジミーの突っ込んだフレーズが耳障りに聞こえ、みんなを焦らせます。むせび泣く後ノリのジョー・コッカーのヴォーカルに突っ込み気味のジミー・ペイジのギター。最高です。ほかのギタリストとは一線を画すファズの音がジミーの主張であります。ソロは全然メロディアスではないですけどね。なんか、ジミー・ペイジだなぁって感慨に耽ります。
 アルバムのサウンドコーディネイトはきっとベースのクリス・ステイントンとやっているんでしょうね。本来なら、アメリカ南部のミュージシャンで固めればそれなりにはまったんでしょうが、新人のデビュー盤ですかんね、そんなにバジェットも無かったんでしょうね。でも、スティービー・ウィンウッドやアルバート・リー、トニー・ヴィスコンティなんて面子をみると本気度は感じられますが・・・。
 そんな中、クリスは良い仕事してますよ。今でこそクラプトンのバックを長年務めてきて、「コカイン」のアウトロの16連打のピアノソロを弾くあの金髪サラサラ親父は、この頃ベーシストでありまして、ジョー・コッカーと一緒に作曲なんかもしてました。のちに一大ムーブメントになった「マッド・ドッグス&イングリッシュメン」の重要なメンバーでして、こん時はアレンジもやってます。
 そうそう、そのバンド、レオン・ラッセルや「いとしのレイラ」の生みの親であるデレク・アンド・ザ・ドミノスの面々(クラプトンはいないよ)、リタ・クーリッジなんかがいて、コーラス隊に至っちゃ9人~10人いたの。で、ドラムなんか3人。もう、サーカスみたいなバンドで・・・やっぱり暑苦しいです。
 時を戻そう。
もう一度ジャケットを見てください。これ、デビューアルバムに使う?そのセンス。
全てさらけ出さないと、あんな顔できないよね。だって全世界に印刷されて出荷されるんだよ。アルバムデザイナーも一発キメてたのかなぁ。
そんなことを考えていると、うすら寒くなってきたので、暑い日に聴くのはいいアルバムではないでしょうか。サーセン。

2020/8/24
花形

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?