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THE WHO 「LIVE IN HYDE PARK」で開眼


 他人から見たらどうでもいい私の「持論」。
①バンドはオリジナルメンバーを好む。特にバンドの華であるヴォーカルが交代することを良しとせず、もし変わるのであれば、そのバンド名を使用して欲しくないと思う。
②オリジナルでレコーディングされた楽曲を好み、セルフカバーを嫌う。ライブ時にアレンジを施すことはこの限りではなく、それはそれで楽しむことが出来る。

 さて、このような拘りをもってしまうと往年のバンドは殆ど見る機会が無くなる。
なぜならバンドメンバーが死んでるか、メンバーチェンジか・・・。
 ストーンズはさすがにメンバーが変わっていても、初来日(1990)だけは観覧したが、ビル・ワイマンが抜けた2回目からの来日には足を運んでいない。
 イーグルスもドン・フェルダーが抜けてしまったら興味が無くなった(厳密に言うとバーニーが抜けた時点でイーグルスじゃないんだけどね)。
 ディープ・パープル、ジャーニー、TOTOなどヴォーカルが変わってしまうバンドは、新たなヴォーカリストを迎えたら、なんだかそのバンドのコピーバンドを観る感じになる(極端かなぁ?)。
だからU2とかってある意味凄いと思う。

 先日、海外出張の帰りの飛行機の中で、「THE WHO LIVE IN HYDE PARK」を観た。このコンサートは、バンド結成50周年を迎えた2015年6月26日にTHE WHOのホームタウンであるロンドン、ハイドパークにて65,000人の観衆を集め開催された大イベントである。
 深夜便の飛行機は中々寝付かれないので、差し障りない懐メロでも聞きながら寝ようかと思っていたのだ。そう、私にとってTHE WHOはオリジナルメンバーが2人も死んでしまった伝説のバンドなのである。だから、先ほどの拘りからすると、大好きなドラマーであるキース・ムーンや大好きなベーシストであるジョン・ウェットウィッスルを失った現在のバンドに興味は無くなっていたのだ。
 THE WHO は偉大なバンドであるし、大好きなバンドだっただけに当時のレコードやフィルムを見ることはあっても、オリジナルメンバーのいない今のTHE WHOが来日した時にライブに足を運ぼうという気持ちすら起きない。
しかし、この母国イギリスでのコンサートを飛行機の小さな画面で見て・・・興奮した。
眠るどころか脳内興奮状態に陥ってしまった。

 オリジナルメンバーは、ロジャー・ダルトリー、ピート・タウンゼントのTHE WHOだが、彼らの音楽は色褪せることなく生きていた。
そして、それを再現するバックミュージシャンたち。
 ドラムはザック・スターキー。キース・ムーンとリンゴ・スターはドラッグ仲間。まさかそのリンゴの息子があんなに上手く叩いているとは・・・感嘆。
聞くところによるとザックはキースからドラムを直に習ったそうで、本当にキースそのもののプレイだった(マシンガンのようなタム回し、クラッシュシンバルでのリズム取りなど)。
 ベースはピノ・パラディーノ。ジェフ・ベックやジョン・メイヤーなど様々なセッションをこなす職人。ジョンが亡くなってからTHE WHOを支えてきた男だ。派手さが無いところもジョン譲りか。 
また、ピート・タウンゼントの息子もギターやキーボードで参加している。

そして、オリジナルの2人は・・・

 ピート・タウンゼントなんかジジィになって体のラインもおじいさんのようなんだけど、決めポーズは格好良いんだよ。パワーコードをかき鳴らし、ギターがレースセンサーのエリック・クラプトンモデルというのが許せないんだけど(この人はギブソン系のギターが似合うと思うんだが)・・・。
 ロジャー・ダルトリーもサングラスなんてかけて、遠目で見てると老眼鏡のようにも見えるんだけど、ちゃんと声が出ているんだよ。わーっ!て叫べるジジィなんだ。
 すげぇ人たちだなぁと思いながら、小さい画面を食い入るように見ていた。

 そういえば、THE WHOは、リード・ヴォーカルとリード・ギターとリード・ベースがいるバンドといわれ、その理由はキース・ムーンのリード・ドラムが存在していたからだと結論付けられている。
 キースの独創的なプレイを活かすのは、ジョンの安定しながらも楽曲を広げるフレーズを持つリード・ベースだ。だから、ピートはパワーコードでギターをかき鳴らしながらもオーケストレーションの様な音の波動を組み立てることにイマジネーションを膨らませることができたのだ。そして、ムーグのシンセサイザーやシーケンサーをいち早くロックのビートに取り入れ、70年代のロックに昇華させることに成功したのだと思う。
 デビューしたてのただただ破壊的な演奏の根底だけはそのままに、ピートの天才的な音楽創作、メンバー個々の相手の演奏を慮る耳の良さがアンサンブルとなり、THE WHOは世界的なバンドに成長していった。
メンバーの奇怪な行動、暴力、ドラッグ、破壊行為、ケンカなど何度も解散の危機に瀕しながらもロックの王道を歩んできたバンド。ある意味、セックス・ドラッグ・ロックンロールを体現し、全世界のロックフォロワーを作った。ジョー・ペリーもゲディ・リーもみんなTHE WHOに影響を受けて育ったのだ。

 2名の尊い天才は旅立ってしまったが、残された2名の天才は、ロックスターの2世たちを従え演奏を続けている。

 演奏を見終わった後、思ったことが一つ。
よくアメリカンロックが好きか、ブリティッシュ・ロックが好きかなどと他愛の無い話をすることがあるが、THE WHOを認めることが出来ない人(好き嫌いではなく)は、ブリティッシュ・ロックが好きじゃないのでは、と。
 
 THE WHOの生き様や言動、もちろん音楽も・・・イギリスのソウルという気がしてならない。
労働者階級の代弁者、シニカル、反骨精神、モッズ、どんよりとしたロンドンの天気・・・。

  50周年記念コンサートが私のTHE WHO愛に火をつけてしまい、日本に帰ってきてから2週間、ずっとTHE WHOばかりを聴いている。もちろん「トミー」「キッズ・アー・オールライト」「アメイジング・ジャーニー」を見直し、胸を躍らせている。

 そして、今日もターンテーブルにTHE WHOを乗せるのであった。

2016年5月25日
花形

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