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エフェクター初体験


 ギターやベースを弾く人なら「エフェクター」という言葉はご存知だろう。使用したことがある人も大勢いると思う。
 僕のエフェクター初体験は中学2年の時だ。友人がエレキギターを弾いているのを横で見ていた時、彼がおもむろに足元の緑色の箱のスイッチを踏んだ。その瞬間、窓ガラスをびびらせ、地鳴りのような音が部屋にこだました。彼はとりつかれた様に弾き始めた。僕は一瞬何が起きたのかわからなかった。
「これは、チューブスクリーマーっていうエフェクター。まあディストーションやね。それからこれは、コーラス。何か倍音が出てる感じがするやろ。それからこれは、フェイザー・・・ほれ、ジョー・ウォルシュがカリフォルニアのエンディングでキョワッって音出すやん。あれや。」
僕の頭の上には?マークが5つくらい乗っかっていたと思う。その時わかったことは、これらの箱を踏むと音が劇的に変わるということだけだった。
 僕も自分のギターで試したくなったが、僕はエレキギターを持っていなかった。フォークギターを買ったばかりだったが、そのギターには後付けのピックアップを付けていたので(当時としては珍しかった)、アンプで鳴らすことはできたのだ。早速、行きつけのスタジオ兼楽器屋の店長に相談したら、あるエフェクターを薦められた。
 僕は疑いもせずにそのエフェクターを購入し、バンド仲間とその場で直ぐにスタジオに入った。みんな口々に
「いいエフェクターの選択だね。」とか
「渋―いっ!」とか言ってくれた。僕はまんざらでもない気分になった。
アンプに通して、スイッチをON!ランプが緑から赤に点滅!
エフェクターの調整は楽器屋の店長がツマミをいじったままにしてあった。

ギターをジャラーン。  ???
みんなは、「おーっ!」  僕は・・・?
「ハウんないな。しっかりハウリングポイントが落ちてるジャン。」「スゲェスゲェ。」
僕が購入したエフェクターは、グラフィックイコライザーというものだった。
 今考えると、アコースティックギターには最適なエフェクターなのだが、当時の僕の気持ちは、ディストーションやコーラスのような音が変わる不思議な箱が欲しかったのだ。僕はきっと複雑な顔をしていたと思う。

 その頃、街に良く流れていたBOSTONの「MORE THAN FEELIN」は宇宙的なきらびやかな音だった。BOSTONはシンセサイザーを一切使わず、ギターサウンドで楽曲を構築していることが売りだった。
リーダー兼ギタリストのトム・ショルツは、マサチューセッツ工科大学の博士号を取得後ポラロイド社に入社、自宅の地下室でデモテープ作りを行い、『BOSTON』(1976)を仕上げたという。また、自ら「ロックマン」という空間系のエフェクターを発案し、特許を取得、未だに世界で発売されているのだ。

 僕は、エフェクターを使えばどんな音でも出せると思っていた。特にBOSTONのような音を出してみたいと思っていたので、いきなりのイコライザーには滅入ってしまったのだった。その後いろいろと調べ、BOSTONサウンドに近い音が出せるようになったのは、大学1年になってからだった。なぜなら、大学1年で初めてまともにエレキギターを弾いたからである。


2005年7月8日
花形

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