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財津和夫コンサート2020 with姫野達也

コロナ禍前に観た最後のコンサートだった。
もう4年になる。
2024年1月26日


「財津和夫コンサート2020 with姫野達也」を神奈川県民ホールで観た。2020年1月26日。チケットを見て改めて確認したのだが、前回観た財津和夫のソロコンサートは33年前の同日。つまり1987年1月26日で場所も同じ、神奈川県民ホールだった(これも何かの縁なのだろう、とても印象的なコンサートになった)。

 33年前の財津和夫は、ソロアルバム『City Swimmer』(1987)を発表し、そのための全国ツアーを展開していた。そしてその頃のチューリップはというと・・・結成時のメンバーは財津和夫だけとなり、姫野達也や安部俊幸、伊藤薫はオールウェイズとして活動していた。つまり、古くからのチューリップファンは大いに戸惑っていた時期だったのだ。
 初期メンバーの頃から応援していたファンは少なからず2回の大きなメンバーチェンジに戸惑い、1987年時点でのチューリップは、チューリップというより財津和夫のソロプロジェクトと化したバンドという認識だったのではないだろうか。
しかし、そんな中で財津和夫名義でのアルバムの発表によるソロコンサートの開催。
チューリップファンとしては「別物」という認識で参加したと思料する。そこにチューリップの音は期待しないし、あくまでも財津和夫を観にいくという気持ちなのではなかったか。かくいう私も、そうだった。
アルバムの曲を中心に進められたコンサートは素晴らしく、チューリップでは表現できない彼の世界観を見ることが出来たことを記憶している。
 そして、33年後の今回のコンサート。
この33年の間にチューリップは解散した。最初の解散は1989年のことである。
 そのコンサートはバンドを離れたオールウェイズの面々も集まり、チューリップの解散に花を添えた。
そして、その後数度の再結成、解散、メモリアル的な復活を繰り返し、時にチューリップ名義でアルバムを制作し、われわれに健在ぶりを示してくれたのも良い思い出となった。
 そんな中、2014年に訃報が飛び込んできた。
ギタリスト安部俊幸が居住先のインドで病気のため鬼籍の人となった、と。
もうあのギターを聴くことが出来なくなったのか、という残念な思いがファンの心を涙で濡らした。
財津和夫も訃報を受けた際に送ったメッセージでは
「もう一度一緒に演奏したいです」とあった。
「演奏したかった」と書かないところに財津和夫の無念さが伝わってきていると感じたものだ。

 さて、財津和夫のコンサートである。
「もうチューリップを見ることが出来ない、あの音を聴くことが出来ない」という気持ちより、ふと財津和夫の声が聴きたくなってチケット購入した。
もちろん、いつも一緒に行っていた中学時代からの生粋のファンである家内と一緒に参加した。
 財津和夫のソロアルバムは『宇宙塵』(1978)『I need you and you』(1980)、『City Swimmer』(1987)しか正直知らなかったが、却って新たな気持ちで聴くことが出来、どの曲もとても素直に身体に入ってきた。
 初めて聞く歌のところどころに財津節があり、何故か安心感を得る。チューリップというフィルターで財津和夫の音楽を聴いていたことは、彼のソロを体感しながら財津和夫という音楽家の凄さを改めて感じ取ることが出来たのではないか。そしてコンサートではところどころにチューリップの隠れた名曲が演奏されるので、驚きと楽しさが相まって非常に楽しい時間となった。
また、チューリップの盟友姫野達也がヴォーカルを取るチューリップナンバーを聴くと、一気にあの頃に戻ることが出来る。そんなチューリップのヴォーカリスト2人の共演は、甘酸っぱい青春の音となるのだ。

 姫野達也はMCで「この歌は安部俊幸と作りました。この歌を一緒に作ることが出来て良かったと思っています」と語った後、「神様に感謝をしなければ」を演奏。
安部俊幸作詞のこの曲は、別れてしまった恋人との歌で、「忘れることを作ってくれた、神様に感謝をしなければ・・・」という切ない歌。
この歌を頭の中で反芻しながら、歌詞にある「恋人」ではないが、安部さんとの別れが初めてつらいと感じた。
 姫野達也がヴォーカルを取る歌は比較的明るい歌が多いが、今までにこれほど悲しい響きを聴いたことがなかった。
 財津和夫がグランドピアノに座り、「青春の影」を歌い始めた。バックミュージシャンの丁寧な演奏に静かに聴き入るオーディエンス。
エンディングのギターソロ。バックミュージシャンの尾上サトシのギターは忠実に安部俊幸のフレーズを奏でているが、やはり安部俊幸独特の間や音色が身体に染みついている私は違和感を覚えたのだが、これも歌を紡いでいくということであれば、歌い継ぐという神聖な行為であると納得し、目を閉じた。

 財津和夫のソロコンサートはチューリップの頃のような熱狂に包まれた歓声というよりも穏やかな雰囲気の中で進められ、チューリップの代表的なナンバーで終了した。
 財津和夫は数多くの作品を我々に与えてくれている。その財産を我々が受け続けることでチューリップナンバーや彼のソロ作品は本当のエバーグリーンミュージックに成り得るし、財津和夫が若いころに創作していた宇宙観や戦争のない世界に通じていくのではないかと確信するのである。

2020年1月26日
神奈川県民ホール
[ 第1部 ]
01. 青春の色 ( 1976年 アルバム『 MELODY 』 )
02.「ストーヴ」(1998年アルバム『ONE WORD』
03. Straight Way ( 1998年 アルバム 『 ONE WORD 』 )
04.急行の停まる街(1992年アルバム『「もうひとつ」の愛』)
05.恋人への手紙(1977年シングル「ブルースカイ」B面)
06.君がいない朝(1995年アルバム『愛はちっとも難しくない』)
07.Mexicoへの青い空(1993年アルバム『Naked Heart』)
08. スカボローフェア(サイモンとガーファンクル)
09. Lemon Tree レモン・ツリー ( 以上 ピーター・ポール&マリー PPM )
10. ドナドナ
11. 風に吹かれて ( ボブ・ディラン )
12. Because( デイブ・クラーク・ファイブ)
13.しっぽの丸い子犬(1973年シングル「夏色のおもいで」B面)

[ 第2部 ]
14.ぼくがつくった愛のうた(1974年シングルA面・同タイトルアルバム)
15.夏色のおもいで ( 1973年 シングル)
16.神様に感謝をしなければ(1979年アルバム『Someday Somewhere』)
17.約束の海(1995年アルバム『愛はちっとも難しくない』)
18.hope(2005年シングル)
19.たった一日で君との永遠が見えたんだ(2007年アルバム『run』)
20.Wake Up(1979年シングル 1980年アルバム『I need you and you』)
21. ふたつの鍵 ( 1976年 アルバム 『 MELODY 』 )
22. サボテンの花 ( 1975年 シングル A面 )
23. 青春の影 ( 1974年 アルバム 『 TAKE OFF 離陸 』 より シングルカット )
24. First Scean ( 藤和不動産 TOWA イメージソング ※非売品シングル )
[ アンコール ]
25. 虹とスニーカーの頃 ( 1979年 シングル A面 )
26. 銀の指環 ( 1974年 シングルA面 )
27. 心の旅 ( 1973年 シングルA面 )

2020年1月30日
花形

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