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給特法と働き方改革

1.給特法とは

働き方改革をどう進めるか?という議論で必ず出てくる給特法。
教師に残業はそぐわないから、残業代を支払わない代わりに、月々の給料に数%上乗せした賃金を支払うという法律です。

2.コストの見積もり

私は民間でSEとして勤務していた経験がある。
システム業界ではソフトの開発に対して「何人月」という考え方で見積もりを行う。
1人が1ヶ月でできる仕事だと1人月、2人で1ヶ月だと2人月というふうに開発コストを見積もり、顧客に代金を提示する。
ざっくり言うとこんな式が成立する。
【人数✕期間=仕事量】
算数の「仕事算」の考え方と似ている。
例えば顧客が納品を早くすることを求めれば期間の短縮を人員で補う。
例えば機能を充実させたいという要望があれば、仕事に当てる人数を増やしたり、期間を伸ばしたりして対応することになり仕事量が増える。
この見積もりを誤ると赤字案件になってしまったり、そもそも受注ができなくなってしまったりという不利益を会社が被ることになる。

3.給特法諸悪の根源論

民間の企業にとって最大のコストは人件費と言われている。
残業代は最も見えやすいコストである。
顧客からの
「もう少し早くできないか?」
「こういう機能を付けられないか?」
という要望に対して、
「これくらいプラスでお金がかかります」
という見積もりを提示し、最終的に顧客に判断してもらう。
給特法があれば残業代の支払い義務が発生する。
貴重な税金から残業代は払いたくないから、仕事が精選されていくはずだ。
というのが、給特法諸悪の根源論の基盤となっている。

4.給特法の見直し、その前に

田中裁判を始め、教育系の討論番組でも給特法が取り上げられる機会が多くなった。
私はこれだけでも、裁判の意義はあると思う。
掃除を例にとって考えた時に、
①それは何時間の仕事になるのか?
②どこを掃除するのか?
③週に何分くらいだったら、確保できそうか?
④清掃業者に委託した場合、どれくらいのコストがかかるのか?
⑤コストパフォーマンスの良い掃除の仕方とは?
掃除にかかるコスト(労働力)が見えれば、ざっと考えてもこれくらいのことは検討のテーブルに乗る。
私は給特法の改正が働き方改革の一丁目一番地とは考えていない。
ただ、この例のように
「この仕事はどのくらいの時間がかかる仕事なのか」
という仕事の分析や、
「そもそも教員がやることなのか」
「外部委託した場合いくらコストがかかるのか」
など、なんとなく慣習と前例で踏襲されてきた仕事が様々な観点から見直されるきっかけになることには大いに期待している。

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