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映画 バッドランズ

こういう内容の映画の感想を「面白かった!」と素直に言いにくいのは主人公が特殊詐欺を生業にしているから。誰かを騙して金を奪っていることは悪い事。

それで、主人公は淡々と生きている。
社会の中で、逞しく生き抜いている。

だったら私は、全然マシだ。
部屋を片付けられなくても、仕事で思うような成果を出せなくても、少々歪んだ家族関係でも、友人との距離感が分からなくて拗らせてしまっていても、でも、真っ当に生きている。
毎日決まった時間に起きて、仕事をして、家族の面倒を見て、掃除して洗濯して食事を作って、お風呂に入って日付の変わらない時刻には就寝しているのだから、それだけで、私の人生全然マシだと、安心していい、よね。

「時には誰かと比べたい。私の方が幸せだって。」
けれど、現実にいる誰かと比べるのは、自分の中の悪意を見つけるみたいになって気が引ける。映画の主人公となら気にせずそう思ってもいい。
私の人生全然マトモ。

物語の舞台は大阪の西成。大阪弁で放たれる言葉のリズムが速い。台詞の内容を理解出来ないことも多くて、物語の展開がよく掴めなかったりしたけれど、その大阪弁のリズムを聴いていると、映画の雰囲気に酔ってくる。心地よくなってくる。まるで、音楽を聴いているかのような、グルーブ感が漂っている。
音楽のフレーズが頭の中で無限リピートするみたいに、映画のその雰囲気が五感で再現されている錯覚があって、また観たくなる。中毒性ありな映画。

台詞の言葉の内容を理解しなければならないことはない。役者の表現、台詞の表情。ロケーションの空気感。暗さとか埃っぽさとか。それから劇伴。そういう、スクリーンの隅々から伝わってくるもの全てを私がどう感じるか。私の五感がどう反応するのか。それが私にとってのこの映画の醍醐味。

とにかく私は、予告を見た時、一目惚れした。
この映画は観なければならないと、魂が揺さぶられた。
それが、全てだろう。

最後に、山田涼介さんが最強にサイコパスでかっこいい。






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