由乃

詩をメインに、たまに短編小説を書きます。 Twitter、monogatary.comにも出没しています。 よろしくお願いします!(´▽`)

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自己紹介

はじめまして。 こんにちは。 藤由【ふじよし】と言います。 普段はTwitterで詩を書いています。 たまーにmonogatary.comというサイトで短編小説を書いたりもしています。 https://monogatary.com/mypage/post/story イラストや写真なども好きで、凝っているワケではありませんが、載せたりもします(*´`) アイコンも自作です。 活動の場を広げてみたくて、noteにも登録をしました。 しばらくは気に入っている過去作の転載

    • 機械仕掛けのこの街で【掌編小説】

      幸せだったある日、彼女が病を患った。 *** 湿った空気の充満する油臭い機械の街で、僕たちは2人で暮らしていた。貧しいながらも慎ましく暮らす日々に不満はなく、むしろ笑顔の絶えない日々だった。 そんなある日、突然彼女が倒れた。彼女を抱えて駆け込んた病院で、医者は言った。「このままでは、永くありません。」と。彼女の病気は脳腫瘍だった。 幸いなことに治療法はあった。機械仕掛けのこの街では、身体の悪くなった箇所を機械に置き換える技術がある。だがしかし、身体の一部とはいえ、精密な

      • 春仕舞【掌編小説】

        高等学校からの帰り道、川沿いの土手の桜並木も、すっかり花びらが落ちて、小さな若葉で緑色に染まりはじめていた。その木を下からじっと見上げる少女が、どうにも気になって自転車を停めた。 長い髪をハーフアップにして、この辺りでは見かけない学校の黒いセーラー服を着ている。葉を揺らす風が、セーラー服の襟をそっと持ち上げた。 「どうされましたか。」 少女はあまり顔をうごかさず、目線だけこちらを一瞥して答えた。 「寂しいのです。もう行かなければならなりません。」 「どこへ行かれるの

        • 主人公になれない僕たちへ【掌編小説】

          「好きです!付き合ってください。」   人でごったがえした賑やかな体育館に響き渡るその告白の相手は、分かりきっていたことではあるけれど、私ではなかった。   和やかに文化祭を終え、一般客のいなくなった後夜祭では生徒たちのテンションは最高潮だ。そんな中、某バラエティ番組を真似て自分の主義主張を大声で叫ぶ催しが行われる舞台上で、先程の告白を行った男の子を私は知っていた。 2年生の細川 健君。 彼と私の接点は何も無い。 学年も違えば、部活も、委員会も違う。強いて言えば、通学

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          ねぇ、スピカ【掌編小説】

          ねぇ、スピカ 教えて欲しいんだ。 君の嫌いになり方を。 いつもの場所。天体観測。 その日は先客が居た。 といっても君は望遠鏡なんて持ってなかったけど。 「星を見に来たの。」 桜が咲き始めた季節。 まだ夜は少し肌寒い。 この日は適当な世間話をして、すぐお互いの世界へと没頭した。 「名前?あの星と一緒だよ。」 その場所でよく会うようになって何度目か。 やっと名前を聞いた。 君が指差したのは、乙女座の金の稲穂の先だった。 「スピカ?」 あまりに変わった名前で、聞き直す。

          ねぇ、スピカ【掌編小説】

          今年もつらつらつらと【詩】

          インフルエンザに終わり、インフルエンザに始まりました。 今年も何かを、あいかわらずつらつらと書いていこうかと思います。

          今年もつらつらつらと【詩】

          クラムボンが死んだ【掌編小説】

           クラムボンが死んだのは、冬の研ぎ澄まされた冷気がより一層鋭さを増す、とある日の朝でした。  私たちは友達のような恋人のようでいて、はたまた他人かのように、都会の隅の真ん中の小さな小さな1LDKに暮らしていました。クラムボンはその私たちのプティ・メゾンの天井を、いつもキッチンからリビング、それから寝室を流れるかのようにさらさらと漂っていました。  昨日の夜に私たちは喧嘩をして、彼はバタンと玄関の扉を乱暴に閉めて、家を出て行ってしまいました。いつも着ているカーキ色のコートを

          クラムボンが死んだ【掌編小説】

          同じ月を見ていました【詩】

          山際から、ぷかりと浮かんだばかりの月が とても大きくて綺麗だった 銀杏と同じ色 兎が餅つきをしていた その月へと真っ直ぐに延びる坂道を まるで追いかけるみたいに車を走らせた ふと、横目で見たカーナビに映るTV そのお天気カメラの映像にも 同じ月が映っていた ここより少し遠い 大きな街に浮かぶ月だった その街に住む知らない人達も 同じ月を見ているのか ここに住むあなたも 同じ月をみていたのだろうか それは、なんとも不思議な気持ちだ 住んでいる場所も名前すら知らないのに あなたの

          同じ月を見ていました【詩】

          あなたと海の底にて【掌編小説】

          「私も、早く海に帰りたい。」  修学旅行で訪れた大阪の海遊館。いちばんきいその水族館の目玉である水槽を目の前に、彼女はそう呟いた。彼女が手を当てる分厚いアクリル板の向こうには、仮初と馬鹿にするには惜しいほどの広い水槽の中を、ジンベイザメを初めとしたたくさんの魚たちが悠々と泳ぎ回っている。 その姿はとても美しい、そう思えた。  日に当たったことがないような白い肌に、色素の薄い栗色の長い髪を持つ彼女は、さながら御伽噺の人魚姫のようだった。少し諦めたような視線と、彼女が纏う浮

          あなたと海の底にて【掌編小説】

          竜田姫【掌編小説】

          今は遠い遠い昔の物語。 都の西の小山の奥にはそれはそれは綺麗な姫様が、人里から離れた静かな宮で大切に大切に育てられていました。 姫様は宮から出ることが出来ません。 どうして自分は宮から出ることが出来ないのか、そんな事を考えることもなく、書を読み、笛を奏で、機織りをして日々を過ごしていました。 でも、なぜでしょう。 その日姫様はなにかに惹かれるように、重い単衣を脱ぎ捨てて宮の外へと足を踏み出しました。 誘われるように、ふらり森の奥へと歩いていきます。 すると、そこには青く

          竜田姫【掌編小説】

          雨音ノスタルジー【掌編小説】

           突然の雨に、思わず今は閉じてしまった駄菓子屋の店先に逃げ込んだ。懐かしい軒先にかかる赤と黄色のテント屋根に雨が打ちつけて、軽快でリズミカルな音をたてる。 「少し雨宿りをしていこうか。」 髪から滴る水滴を拭いながら、慎二が言う。約束の時間に遅れそうだから、どうにかならないかと一生懸命考えるけれど、なんど考えてもこの辺りには傘を買える店はない。 「ごめんね、せっかく来てもらったのに。」 「いいんだよ。ここなら街も見渡せるし。 きっと、すぐに止むよ。」  私の故郷である

          雨音ノスタルジー【掌編小説】

          下弦の月【詩】

          これから欠けゆくばかりなので、下弦の月に秘密を打ち明けます。 ティーカップに角砂糖を溶かして、それはゆるりと時間をかけて夜のしじまに染みてゆきました。飲み干したものは私の一部になるでしょう。取りこぼしたものはシーツの染みになりますね。朝にはきっと、あの月とともに消えてしまいます。どうぞ、安心して。 私は声を上げないように掛け違えたボタンを一つづつ外して、するりと肌を滑り落ちるのはあなたがついた嘘でした。部屋の空気は私に纏わりつきます。煩わしいったら、ありゃしない。隔てるもの

          下弦の月【詩】

          アゲハ蝶【SS】

          蝶々を捕まえるなら、きっと夜がいい。と、私の下でその羽根を羽ばたかせる、蝶々を見ながら。あなたの鎖骨下のアゲハ蝶よ、私の手に落ちてこい、落ちてこい。そう願いながらも、もう既に堕ちているのは私の方で。鱗粉の甘い香りに酔いながら、あなたの体温を貪る。どうせなら酷くして欲しい。明日の朝あなたのつけた跡だけが、今が夢ではないことを教えてくれるはずだから。

          アゲハ蝶【SS】

          旅人と傘の国【SS】

           見渡す限り一面に青々と茂る草の間に、ひっそりと先人たちの踏み固めた細い道が、地平線の向こうまで続いている。この広い広い草原の中の道を、旅人はひたすらに歩いていた。  昨日あった小型のトラックに乗った2人組の旅人によると、人の足で歩いて今日の夕方には次の国につける予定だ。国に入って美味しい料理で腹ごしらえをするのを楽しみにしながら、旅人はひたすらに歩みを進めていた。  しばらくすると進行方向の水平線に黒い雲が現れたかと思うと、あっという間に雨が降り始めた。ここしばらく雨なん

          旅人と傘の国【SS】

          8月32日【掌篇小説】

          消えた8月32日を探している。  捲らなければならないカレンダーの31日の隣の空白。朝起きると、昨日は確かにあった32日が消えていた。 母さんのエプロンに32があった。ペロリと剥がしてみても、カレンダーには戻らなかった。32であっても、32日ではなかったらしい。 お父さんのメガネにも32があった。レンズの裏にゆらゆらと揺らめく32を、指でぐるぐるしてから、パチンと捕まえた。でも、それは32日じゃなくて3月2日だった。お父さんは32歳だよと笑った。 おばあちゃんが「それ

          8月32日【掌篇小説】

          夏の終わり【詩】

          夏の終わり【詩】