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キタダヒロヒコ詩歌集

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三重県で詩や短歌、俳句を花びらのように書き散らしてきました。noteマガジンにまとめていきます。ぜひお読みいただけましたら嬉しいです。あなたのどこかに残る言葉がありますように。
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2023年12月の記事一覧

もうすぐ、ある。

新年の楽しみな予定。 「教育文芸みえ」(休刊から早や10年以上…全国でいちばん最後まで残っていた教職員の文芸誌でした)の短歌欄でつながった皆さんと、1年ぶりの歌会をします。 1月5日しめきりで、ひとり3首の出詠。とりまとめ役はわたしです(笑)。皆さんの歌が楽しみ❗わたしキタダはといえば…今のところできたのはなんだかうら悲しい歌ばかりなので、旧作も交えて「この歌がどう読まれるか?」というのを出したいと思っています。 大正九年盲ひし祖父のまなうらの大正九年の蝶のはためき

キタダヒロヒコ詩歌集 165 刻印

あなたに見せたい言葉がある あした あなたに贈りたい また一篇の詩 あなたはいつも読書の手を停めて わたしからの言葉に目を落してゐる そしてなんの飾りもない すきとほつたクリアファイルごと持ちかへる あなたの部屋のどこかに わたしの言葉が蔵はれ しづかに積もる ああわたしのどの言葉が あなたのなかに残つてゐるか 刺さつてゐるか 刻印されてゐるか TATTOOのやうに 鈍感をよそほひ あなたはわたしの目論見を おそらく知つてゐよう のびやかにもひつそり潜く海女

キタダヒロヒコ詩歌集 164 Inspire from A. 2

蜻蛉玉は覚えてゐる 1200度の息を吹き掛けられ ぽとり、と落ちた日のことを 自分を吹き落とした男の顔を かつてわたしは紙とインクであつた 一冊の詩集であつた またかつてわたしは 二足で歩行する獣の骨だつた またかつてわたしは 難破船のマストの古い柱であつた 電話機だつた 皿であつた うねる高温の 吹き矢の先で わたしたちはみな 硝子のしづくとなつて 昇華した 冷たい星を 記憶したまま 信じられぬ速さで 冷えた 誰かが わたしたちを 手に取り その体温に 

キタダヒロヒコ詩歌集 163 それは美しいことだが

この喪失感のおかげで 詩がいくつか書けた それは美しいことだが 呼吸のしっぽがみじかくなって 淡い雲がいつも頭の中を充たし すこし遠いその街のことを想う毎日 あてどなく漂っていた言葉が やわらかな渦を巻いて ほろ苦く甘く 私の知己の身辺を醸す それは 嬉しいことではあるが (2013.12.13)

キタダヒロヒコ詩歌集 162 Inspire from A. 1

夜毎に募る言葉らよ 密やかで艶やかな内心に 縺れあふ 恋情のぬばたま ひび割れの 奈落の底に落とし込む なつかしい衝動 昼の世界からの しづくを わづかずつ吸ふ 栽培する ただひとつだけの思ひ 夜なのか昼なのか  表なのか裏なのか ひるもよるも、うらもおもても ただあこがれと情慾の 君のかたちに 透きとほる容器。

キタダヒロヒコ詩歌集 161

君はふむはじめての雪たたなづく飛騨路の朝に薄く化粧ふを 朴の葉のうらじろの葉に焼く味噌をうまらに食ひき飛騨の宿ゐに 化粧ふ=けはふ

冬の言葉

2014年12月はじめに書いた文章です。 ********************* 冬が歩みを速めてゐる。 だれかに共感した…というとき、 それはもちろん自分の側の感じ方だ。 だから、そのだれかが感じたことと、 自分が感じたことが同じなのかどうか、 実のところそれはわからない。 その意味では人は永久に孤独なんだけれども、 言葉を橋渡しにしてコミュニケーションをとることはできる。 言葉は、絶対なものではなくて穴だらけなものだけど、 むしろ穴だらけだからこそ コミュニ