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キタダヒロヒコ詩歌集

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三重県で詩や短歌、俳句を花びらのように書き散らしてきました。noteマガジンにまとめていきます。ぜひお読みいただけましたら嬉しいです。あなたのどこかに残る言葉がありますように。
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2023年7月の記事一覧

キタダヒロヒコ詩歌集 154 猫のこと

猫のこと     キタダヒロヒコ 避けられなかったのだ 猫を とおくの 奥のほうの 空だけが いつまでも赤く じんわりと残っていた つらい赤さを 見せつけてきた わたしは動転したまま その方角へ走るしかなかった はじめての感触が 右足に残り わたしの悔いは橋にへばりつき 硬直したまま延びきって 怒り わたしを呼んだ 犯罪者が たいがいそうするごとく わたしは 橋へ舞い戻るほか、ありませんでした 橋は すっかり冬の夜でしたが、 そこだけが、 ぼんやり白いよ