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キタダヒロヒコ詩歌集 154 猫のこと
猫のこと キタダヒロヒコ
避けられなかったのだ
猫を
とおくの 奥のほうの 空だけが
いつまでも赤く
じんわりと残っていた
つらい赤さを 見せつけてきた
わたしは動転したまま
その方角へ走るしかなかった
はじめての感触が
右足に残り
わたしの悔いは橋にへばりつき
硬直したまま延びきって
怒り
わたしを呼んだ
犯罪者が
たいがいそうするごとく
わたしは
橋へ舞い戻るほか、ありませんでした
橋は
すっかり冬の夜でしたが、
そこだけが、
ぼんやり白いような
気がしました。
なにか硬い感じがありました。
ああ
何もかもが満月に見え
焼き菓子の店の窓
店のなかにいる
おんなのひとの
あまりはっきりみえない顔
頭上の
黄色い信号
前から来る
車の目の光り
わたしは余計な満月のひかりを
みつけすぎるばかりで
いったいどうふるまえばいいのか
少しもわからなかったのです。
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