見出し画像

不定期連載 ファランク家の人々

友人が小説家をしている。私は焚き付けられてこういった小説を書いた。何しろメルサンゴ、小説は初の試みにつき。拙く仕上がったが。ミステリーをここに見いだしてくれたら幸いである。
序章

『三人の少女が見つめている。

澄んだ川底に沈む腐乱死体。

浮き輪が破れたように大腸が浮かんでいる。

鼻につく腐乱の匂いを彼女たちは気にしない。

三姉妹は生まれながらの探偵であった。

ジェシカ、ミラン、フィアンナ。

地元でその名を知らぬものはもぐりか知らぬふりをした小癪な犯人。

彼女たちは通学路。また事件の臭い匂いを嗅いだ。

帰宅後彼女たちはチーズを食べながら。こう語り合った

ジェシカ「面白いね。被害者は突き落とされて殺されたんじゃなくて、刺された後に殺されたの。じゃなきゃあんなに腸がでないわ。」

二人は共感した。

クラド警部補は彼女たちの家のドアをノックした彼女たちの母ジャクリーヌはなれた手付きでドアを開けた。

ジャクリーヌ「おかえりなさいませ。警部補様」

その男は笑顔でこういった。

クラド「君のそのお茶目なところが大好きだよ。」

ジャクリーヌ家はこのフランドール地方の名家の一つだ。

今でこそ廃れたが、この三姉妹と夫妻が健在だった頃。社交界を賑わせていたそのメインステージにいた家系であった。

しかし家族仲のよいこの素敵な家族を、あろうことか親戚たちは働き者のジャクリーヌの恥さらしと鼻つまみものにして邪険に扱っていた。そうでなければ、彼らはこんな片田舎の豪邸ではなく。

パリのメインストリートに豪邸を構えていただろう。

しかし、働き者の彼らはそんな愚か者たちのやっかみなど気にしない様子で、日々こうして事件を稼ぎながら、莫大なお金を自分達で稼ぎ、豊かな生活を送っていた。

故に町の人たちで彼らを嫌うものはなく。

罪人のみが憎んでいたが、彼らは殆どが死刑か終身刑。断頭台で罵詈を吐くにすぎなかった。
父の仕事は休暇のようなもの。平和な町で事件はめったに起きず。起きてもたちまち三姉妹が解決してしまう。

町は一番のユートピアで片田舎であったが、それでもこの辺りでは一番栄えていた。
また被害者について述べると、
今回の被害者は彼女たちの知り合いで家族ぐるみの付き合いのある好青年であった。大農家の跡取り息子で三姉妹のよき友人であったヨハンファーマーであった。

ミランは静かに怒りながら「敵はとってやる。安らかに眠ってね」といった。


ここで、ファランク家を怒らせた犯人の視点に変わる。

男の名はカステルファランク

ファランク家本家の長男でどら息子であった。

事件や喧嘩を起こしてはファランク家の威光を撒き散らし、パリの町は常に彼によってどん底に落ちていた。

彼はおさない女の子を平気で足蹴りにし、赤ん坊を家の屋根から落として大笑いするような性根の腐ったやつであった。

彼は噂であのファランク家の恥さらしに友人にできたと知ると「殺してやろうぜ。」と悪友たちを誘い。

金貨をやると嘘をついてその善良な青年を川まで誘き寄せ。ナイフでひとつきして、川底に重石をくくりつけたのち、まるでものでも扱うかのようにほうりこんだ。

「馬鹿な貧乏人がファランク家にかかわるからだばーか」彼はいつもどうりの暴言を吐いて。パリへと帰っていった。
場面は三姉妹に移る。

フィアンナは能力者だ。ありとあらゆる能力をもっていたが、千里眼が一番優れていた。また、事件の痕跡から事件当時の状況を正確に把握することができた。

「あいつが犯人よ」彼女はいった。

二人は「カステルか」

とたずね。

フィアンナは「そうよ」と答えた。

よって、父にその事を伝えると、すぐに父はパリの警視庁の長に電報をうち。

カステルはたちまち裁判にかけられ縛り首となった。

ファランク家がファランク家の友人を殺すという悲しい事件はこうして幕を閉じたのであった。

「終わり」』
『はて、まだ1500字程度か』
メルサンゴ氏は、そう呟くと、キーボードを打つ手を止めた。
赤茶色の木目調の机の上にあるコーヒーをのみながら、外の元気な近所の子供たちの叫び声に微笑みを浮かべ『昔は元気だったのに』と寂しそうな声でいった。
彼は50を超えていた。若き頃はスポーツマンでがっしりとしていた体はすっかり弱くなり。5000字近くかけた集中力は衰えに衰えてついには、1000字を超えると目の疲れが出るようになった。
ファランク家の家族は彼の憧れでもあった。
普通の中流階級の家に生まれ育ちなんの不自由もなく小説家の道に進むために大学へいき、過去の文豪のように中退する勇気もなく、普通の成績で卒業した。『臆病者のへたれ』であるとメルサンゴは自負していたが、意外にも世間は彼のことを認めており、20歳のころは天才大学生小説家とあらゆるメディアがもてはやした。それは今も健在で、常に小説をだすたびに『次は、ノーベル文学賞候補はメルサンゴ氏に関するニュースです』とニュース原稿をうきうきと読み上げた。
『子供のような純粋さを忘れ、世間の期待に押し潰されそうになった老いた翁の気もしれず。みなは、期待のまなざしを私に向けてレッテルを張るのである。』
パソコンを丁寧に仕舞うと、大きくゴシック調をした古い物言わぬ頑固な戸棚から本を一冊とりだし、『いつもありがとう』と言って、彼の、今日のルーティンワークは終わるのである。

第二幕
メルサンゴは街中を闊歩する。Ankerのヘッドフォンを首にかけながら、軽快に踊っている。脳内の音楽をコーラのように弾けさせながら。小説のスランプなど、とうにすぎて、『喉元過ぎれば熱さを忘れる』
ゆえに、彼は今愉快と悦に入っていた。
道路の黒ずんだガムを踏んでも彼は不快に思わなかった。すこし黒い革靴の底が汚れただけである。
出版社に期日通りに原稿を丁寧に手渡すと、彼はご機嫌で帰っていった。
終幕


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?