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第10話 偽りの過去

明智は関わりのありそうな資料を全て運び終えた。

そして、部下を呼びつけた。
「警部補。どうかされましたか?」

「私の部屋に、誰も入れないようにここで待機してくれ。
2,3時間で戻るから、その間ここにいてくれ」

「わかりました」部下は不思議な面持ちをしたが、命令なので従った。

明智はそのまま藤田の所に行った。
「警部。何かわかりましたか?」
「いや、よく分からんがこの三人に恨みのある事件だとすると
厄介だな。犯人が警官だとは思いたくないが、二日目の警備の事を
考えると、その可能性も入れなければならない」

「ええ。私もそう思います。あと、私の部屋にある資料はそのままに
しておいてください」

「どこかに出かけるのか? ろくに休んでないだろ?」
「はい。ですが、重要な手掛かりを得れるかもしれませんので
行ってきます」

「もう1日以上寝てないから運転は警官に任せたらどうだ?」

「いえ。警部も言ってましたが、内部の犯行だとしたら気は抜けません。
この会話は、今はここだけの話にしておいたほうがいいです」

「確かにそうだな。気を付けて行って来いよ」
「はい。ではまた後ほど」

明智は北見の両親に会いに行った。彼の両親なら結婚相手の名前を、
知っているかもしれないと思ったからだ。

しかし、可能性は高くは無かった。北見は私に立会人を頼んできた。

普通は両者とも知っている人がなるものだが、北見の婚約者を全く
知らない私に頼んだ理由はなんだ? その理由も確かめる為、彼は
北見の実家へと向かった。

警部の言った通り、眠気がどうしても取れない為、彼は路肩に車を
止めて、少し休む事にした。

コンコンという音で目が覚めた。懐中電灯を照らされて、
「どうかされましたか?」と聞かれた。

いつの間にか辺りは暗くなっていた。そんなに寝たのかと思って、
ドアを開けて警官に時間を尋ねた。
「8時過ぎてますよ。免許証の提示をお願いします」

明智は警察手帳を出した。
「これは失礼しました」警官は敬礼をして詫びた。
「いや、ありがとう。ここ数日殆ど寝て無くてね」

「署に戻るなら藤田警部に話は明日になると伝えてくれ」
「わかりました。お気をつけて」

明智はそのまま北見の実家を目指して再び走り出した。

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