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第14話 北見の遺言

『よう、明智。久しぶりだな、これを見てるってことは
俺は殺されたようだな。ここまで辿り着くとお前を信じてた。
PCの扱いも出来るようになったようだな。

まあ、いい。本題に入ろう。あの暗号の通り、
美紀は死ぬ寸前まで……酷い目にあった。俺は警官だが
奴らをどうしても許せなかった。

自分でも驚いたが、人間は底まで落ちると変わる事を知ったよ。
俺がまさか殺意で満たされるなんて、思ってもみなかった。
美紀には幸せになって欲しい。落ち着いたら、これを
見せてあげてくれ。野田と泉は、ただの使い走りだ。

絶対に許せないのは小林だ。奴はこれまで多数の女性を
傷つけていた事は分かった。調べれば調べるほどに
悲惨な女性たちがいる事が分かった。

俺は小林たちと決着をつけるつもりだが、死んじまったようだ。

美紀の仇をお前に任せると言うのが、どれだけお前を苦しめる事に
なるのかは理解している。本当に心からすまないと思っている。
だけど、お前にしか託せない。本当にすまない……言葉もないよ。

奴らは今まで運よく続けられてきただけで、いつかは終わる。
ただいつなのかは分からないし、お前はおそらく昇進しているだろう。
事件を解決したら、ひとつだけ頼みがある。

町はずれにある教会が美紀は好きで、よく休みの日に行く事もあった。
キリスト教じゃないが、あの静寂が何とも言えなくて、結婚式は教会で
あげようと話してた。後ろから左の五番目の席の中央の奥に、婚姻届けを
隠してある。お前に立会人になって貰おうと話してた。

俺も美紀ももう記入は済ませてある。美紀に渡してくれ。想い出の決別は
必要だからな。せめて天国からお前を見守るよ……また会おう友よ』

見終わって明智は涙が出ていた。
「犯人は間違いなく美紀という女性だ。俺には逮捕なんて出来ない」

北見が言っていた教会に行って、婚姻届けをまずは探そう。
これでようやくフルネームが分かる。逮捕に関してはまだ何とも言えないまま彼は町外れの教会へと車を走らせた。

彼は北見の言っていた場所を屈んで見た。
確かに封筒らしきものが張り付けてあった。彼はその封筒の中身を確認すると、再び車を走らせて、二番目に殺された野田の警察の寮へと向かった。

婚姻届けには清水美紀と書かれてあった。彼は出来るだけまずは秘密裡にしたいと考え、管理人にも聞かず、簡易的に設置された手紙などを入れる場所から探し出した。

最上階の五階にその名前があった。502号室。もしもの場合に備えて、
管理人の隙を見て、五階の全ての鍵を盗み取って、彼は階段を駆け上がった。

明智はその部屋へ汗だくになりながら駆け上がり、インターフォンを鳴らした。
彼女からの返事が無かった為、彼は管理人に預かった鍵で中に入った。

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