【超短編小説】 アンサーブック
「この本はあなたが知りたいことが何でも理解できる万能な本でございます。我々はアンサーブックと呼んでおります」
怪しげな格好をした商売人は私に本を売りつけてきた。
「その方法はとても簡単でございます。あなたが本を開く前に知りたいキーワードを呟くだけで良いのです。次にページをめくった時にはあなたの知りたいことが何でも分かります」
「値段はお高いのでしょう?」
「いえいえ、今ならサービスをさせて頂きます。600円でどうでしょうか?」
いかにも安っぽいが、それぐらいの値段なら買っても良いかと思い、私はアンサーブックを購入した。
なかなか厚みがあり、ズシリと重たかった。
商売人は私にアンサーブックを渡し終えると「ただし、使い過ぎには気を付けて」と不敵な笑みを浮かべた。
それからというもの、私はあらゆることを調べ、多くのことを知った。
商売人が言ってたように、アンサーブックを使えば分からないことは何一つなかった。
しかし、だんだんとアンサーブックを使うのがしんどくなってきた。
「なんでも分かり過ぎるのも疲れる」
私は嫌になり、アンサーブックを燃やしてしまった。
すると、どうだろう。今までアンサーブックで知った全てのことが頭の中から無くなってしまった。
そしてそれと同時に、何か新しいことを考える力も無くなってしまったのだ(完)