【超短編小説】 拒絶バリア
「どうしたら良いんだよ」
彼女の拒絶バリアの値は90になった。
僕は彼女の前にある拒絶バリアを溶かすことに必死になっていた。
拒絶バリアの値が大きくなるにつれて、バリアの厚さもどんどん厚くなっていく。
すると、突然、神様が現れた。
「若者よ、そのようにバリアを溶かすことに焦ってはならぬ。
人は誰もが拒絶バリアを持っているのじゃ。
拒絶バリアは相手のことを受け付けられないと感じた時に現れ、
バリアの値が大きくなるにしたがってますます関係が悪くなるのじゃ。
そのように焦っても拒絶バリアはすぐには溶けぬ」
「じゃあ、どうすれば彼女は僕から拒絶しなくなるんですか?」
「拒絶バリアを溶かすためには時間をかけ、気にかけることが大事じゃ。
自分のこれまでの行ないを振り返り、バリアの値が少しずつ下がるように働きかけ、彼女への思いを持ち続けることじゃ。
ただし、それによってバリアが溶けるかは彼女次第ではある」
そう告げると、神様はどこかに消えてしまった。
僕は一旦、その日は彼女と別れ、家に帰ることにした。
それから、僕は彼女の元へ会いに行っては反省を伝え、彼女のことを気にかけた。
すると、少しずつではあったが、彼女の拒絶バリアの値は下がっていった。
ある日、彼女の拒絶バリアの値が5になった。
拒絶バリアは、薄い1枚の透明なシートのように変わった。
僕は彼女に向かって心の底から叫んだ。
「僕が悪かった。それでも君のことが大好きなんだ」
その一言で、彼女の拒絶バリアを完全に溶けた。
その瞬間、天空から神様の声がした。
「若者よ、よくぞやった。これからも彼女のことを思い続けるのじゃぞ。
しかし、拒絶バリアは些細なきっかけによって、また容易く現れる。
日々、相手を労わり、程よい距離を保って気にかけることが肝心じゃ」
神様はそう言うと、向こう側に見える拒絶バリアを抱える人たちの元へ飛んで行ったのだった。(完)