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【超短編小説】 存在

ここにAとBという二人の人間がいる。

この時、二人は存在している。

それは紛れもない事実だ。

考えてみれば、存在とは不確かなものである。

それは、突如として失われてしまうかもしれないあやふやさを抱えている。

この存在がいつまで維持されるかさえも分からず、

また、いつの日かAとBのどちらかが、自分がどこに存在しているかさえも理解できなくなることもあるかもしれない。

しかし、この瞬間、この何十年間において二人が存在したことは、

決して消えることはないだろう。

Aの中に「B」の存在があるのと同様に、Bの中にも「A」の存在があるからだ。

両者は相互に影響し合い、AとBは互いの存在を認識する。

Aは言う。

「私にはBの存在がなければ」と。

Bは言う。

「私にはAの存在がなければ」と。

二人は確かに存在している。

そして、これからもAとBは永遠に存在する(完)