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【超短編小説】 悩んでるんだダンス

私は悩んでいた。

「なに、悩んでるの?そんな難しい顔しても変わらないんじゃない」と妻は言った。

「君には分からないさ」と私は冷たく返した。

「そういう時はね、悩んでるんだダンスを踊れば良いの」

「悩んでるんだダンス?」

「そう。最近、考えたの。こうやってやるのよ」

妻は椅子から立ち上がると、手をひらひらさせて「悩んでるんだダンス」と何度も繰り返し言いながら踊り始めた。

「くだらないことするのは止めてくれ。そんなことで悩みが無くなるわけないじゃないか」

「あなたもやってみたら、分かるわ」

妻にそう言われ、私は渋々ながら、そのダンスを踊ってみた。

「悩んでるんだダンス、悩んでるんだダンス」

「もっと大きな声で!」

「悩んでるんだダンス」と繰り返し言いながら踊ってみると、だんだんと気持ちが軽くなっていくような気がした。

「ほらね、悩んでいるのもアホらしくなってきたでしょ」

「ああ、確かに。悩みが無くなっていく気がする」

夫婦はいつまでも笑いながら楽しく踊り続けた。

これが後に社会現象を巻き起こすこととなる悩んでるんだダンスの誕生秘話である(完)