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【超短編小説】 食パン


目を覚ますと、パンの匂いがした。

僕は階段を下りて台所に行くと、ママがパンを焼いていた。

「もう起きちゃったの?まだ寝ててもいいのよ」とママは言った。

でも、僕はパンが気になった。

「何パン、作ったの?」

「何パンでしょう?」とママはクイズを出してきた。

「メロンパン?ジャムパン?クリームパン?」

「甘いパンばっかりね。食パンよ」とママは笑う。

「食パンなんて、味しないよ」と僕は悔しがる。

でも、ママは「そんなことないわ」と言う。

焼き上がった食パンを一口食べると、

ほのかにハチミツの甘さが広がった。

「おいしい」

僕は思わず、食パンに齧りついた。

ママは食パンを食べる僕を見ながら、照れくさそうに笑った(完)