見出し画像

耳だけがアウェイ

埼玉県産のおいしい野菜が評判のビュッフェに行った。

車で1時間ちょっとかかった。
ランチには遅かったから、満席というほどでもない。
サラダバーで、かわいいご婦人が
「ここに来たら葉っぱ野菜をたくさん食べちゃうのよ。あおむしみたいにね。」
と言うのが聞こえた。
どの人もはらぺこあおむし。
思い思いのお皿を持って、野菜料理のカウンターをめぐる。

サラダを盛り付けて席に戻ったら、隣りのテーブルに関西弁の一家が座った。
関西弁にもいろいろあって、大阪と神戸では特徴が違う。
お隣りのご夫婦はその口調から大阪のかたと推測した。
ナニワ一家。
でも高校生くらいのお嬢さんは関西弁じゃない。
我が家も一緒だ。
関西弁は夫婦だけ。
我が家はナニワは名乗れない。
同じ関西弁でも西のほうの緩さがある。
まあそれぞれの個性によるところも大きい。
知らんけど。

ナニワ一家は料理を取りに行った。

ナニワパパは初っ端にカレーを盛り付けてきた。
お嬢さんに
「最初にカレーってあり得ないんだけど〜。」
と笑われている。
私もそう思う。
「ここのウリは野菜やけどな。」
美人のナニワママによるツッコミ。
私もそう思う。

「なんでやねん。いっちゃんはじめはカレーやねん。」 
へこたれないナニワパパ。
ママとお嬢さんにいじられながらも嬉しそう。
だいたいみんなカレー好き。
最初から思う存分食べなはれ。

関東に暮らしていて、関西弁が聞こえると、素早く反応してしまう。
関西弁が耳に入れば自分の関西弁は棚に上げ、チラッと見てしまう。

反対に、大阪の飲食店などでお店のかたとお客様のやりとりが全部コテコテの関西弁だったりすると、チラ見もできずにフリーズ状態で耳をそばだてる。
全員芸人さんかと思う。
口を開けば自分も関西弁なのに。
妙に落ち着かない。
関西にいるときは完全に耳がアウェイ。
聞く耳だけが関西じゃなくなった。

実家のある兵庫県で暮らした時間より、埼玉に暮らした時間のほうが長くなったことを実感する。
どこに行っても「あの関西弁の人」と言われているような気もするが、
聞こえてくるのは関西弁じゃない。

関西在住の地元友達に耳アウェイについて話すと、
「そんなもんかなあ。」
あまりピンとこないと言う。
そういうもんなんよ。
おかしなもんやけど。

食事を終えて、隣りのファーマーズマーケットに移動。
友人おすすめのパンを買う。

トマトコーナー、人参コーナーが今までに見たことないほどカラフル。
おしゃれ野菜がズラリとある。

さっきのビュッフェでオレンジ白菜のサラダが美味しかったのでオレンジ白菜もカートに入れる。
オレンジ白菜のサラダは、
刻んでシーザードレッシングで和えるだけ。
黒胡椒をたっぷり。

友人と一緒に時間をかけて買い物し、レジに並んだら、また関西弁が聞こえてきた。
後ろにナニワパパとママが並んでいる。
会話から、ナニワ家の夕食はカレー
ということがわかり、盗み聞きしたうえ、さらに申し訳ないが心の中で爆笑してしまう。
ナニワパパはさっき山盛りカレーを食べていた。
昼カレー夜カレー、でもがっかりしない。
カレーの王様ナニワパパ。
明日の朝だってカレーかもしれない。
たぶん、おそらく、
知らんけど。

彩の国の関西弁。
ホームは埼玉県だ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?