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【エッセイ】妻と私のライアーゲーム~その①~

今日は風の強い日だった。
私は毎日駅から20分歩き、帰路につく。
今日も変わらず歩いていたが、風が何度も私の体を冷たく押してくる。
その時いかなる偶然か、ひときわ強く吹いた風が私の髪形をかき乱したのだー

突然だが私の髪形は七三分けだ。
いつからその髪型をしているか、もはや覚えていないが、妻と知り合った頃にはすでにそうだった。
髪の長さが変わろうとも、サイドにバリカンを入れてツーブロックにしようとも、髪の分け目はきっちりと同じ七三分けにしているのだ。

ーそのひときわ強く吹いた風にかき乱され、何の偶然か私の髪の分け目は左右逆の七三分けになったのだ。
その時、私に天啓が舞い降りた。
「帰宅した夫の髪の分け目が左右逆になってたら面白んじゃない?」
私は左右逆のになった髪の分け目を、あたかも最初からそうだったかのように自然に整えた。
髪が整い、準備も整った。
そこから私と妻の戦いの火ぶたは切って落とされたのだ。


先制攻撃の重要性

この戦いの肝はどこか。
ズバリ先制攻撃である。
私をみた妻がその違和感に気づいた時、笑いが起きる。
その瞬間私の勝利が確定するのである。

「ただいまー」

いつも通りの時間に帰宅した私は、キッチンに向かい妻に声をかけた。

「おかえりー」

いつものようにこちらに顔を向けた妻に、逆七三の私が相対する。

「・・・」

おかしい、妻の反応がない。
いや、一瞬固まっていたので髪の違和感には気づいているはずだ。
私には長い時間に感じたが、一瞬だったのだろう。
妻は何も言わずにキッチンに向き直った。

先制攻撃が外れた。
こうなると私はかなり不利な状態に追い込まれる。
ここで今回の戦いの勝利条件を確認しておこう。

・妻が笑ったら私の勝ち
・妻が私を笑わせたら妻の勝ち
・双方笑ったら引き分け

である。


戦いは長期戦へ

私は今回の戦いにおいて武器を一つしかもっていなかった。
その武器が躱された以上は私に攻撃権はもうない。
なんなら風呂に入り終わってこの文章を書いているので、髪の分け目はいつも通りに戻っている(戻った時に笑ってもらえるかと思ったがそれもなかった)。

例えばだが、もし明日の朝食中、不意に
「なんで髪形逆だったの?」
なんて時間差突っ込みを喰らおうものなら、私が笑うのは確定である。
つまり現時点でこの戦いは妻が非常に有利な状況である。

こうなったら妻がすべてを忘れて、なんならこのくだらない戦いを私自身忘れ去るしか勝利(とうか引き分け)の道はないのだ。

笑いのない夫婦に先はない。
私たち夫婦の戦いは続く。   
to be continued・・・



*見直して気づきましたが全然ライアーゲームではなかったことをお詫び申し上げます。正確には私の一人ドキュメンタルですな。

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