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執行猶予10年の嘘

私は嘘をつくのが仕事です。そう答えていた彼女は今では立派なCAである。

夏休みのある日混み合ったショッピングモールで私は優香を見かけた、普段学校では笑うことがない優香がよく笑っている、あんな笑顔見たことがない。家族内ではよく笑い、学校生活では笑わない。そうやって二面性を持っていることがかっこいいのだろうか?私には分からないそんなことをしたって何の意味もないのに‥‥。

微かに光る街頭の明かりが夏休みの終わりを告げるように、母親からの説教もまた、夏休みの終わりを知らせている。学校が始まればクラス内では夏休み何してた?やら宿題やった?など定番の会話が響き渡る。相変わらず誰とも喋らず席に座っている優香を横目で見ながら私は自分の席に座った。 
チャイムと同時に先生が教室内に入ってきた。クラスのみんなは一斉に自分の席に座ると
先生から号令の合図が出る、ホームルームの始まりだ。
2年3組、これが私のクラスで先ほどからよく登場する優香は同じクラスの子で、いつも一人でいるとても静かな子である。あの事件が起こるまでは普通の子だと思っていたが、あの事件を目の当たりにした私はそれ以降普通に見れなくなってしまった。1番怖いのは優香の平然ぶりだ、なぜあんなにも平然でいられるのか不思議でしょうがない。

夏休みも終わり忙しくなるが今まで通り優香を監視する業務をやらなければいけない、あの事件以降私は優香を監視しているというかさせられているという方が正しいのかもしれない。
休み明け初日の学校が終わった。疲れた早く帰ってゲームでもしたいと思っていた矢先優香が私の目の前を通り過ぎていったこんな機会は滅多にない、優香は私より先に帰るかいつもなら親御さんの車で帰るの二つだったが、今回は帰る時間が私と被っている、こんなチャンス逃すわけにはいかない。結局バレずに優香を尾行し続けた、前の家は知っていたが引っ越してからの家を知らなかったので家を特定することができた。
意外と私の家から近いことが分かった。

あれから時は経ち私は高校生になった7年間優香の監視をしていたが、今のところ分かったことは家の場所と通っている学校ぐらいだ。優香と同じ学校に通おうとしたが成績が足らず行けなかった。その代わり前と同じように監視ができるように私は自由な時間にいける通信制の学校を選んだ、私の学校は夜に授業があるので優香の学校が終わる夕方には尾行できるようになっている。小中は親御さんのお迎えや早い時間に帰っていた優香だったが高校からは友達ができ、みんなで帰ることが増えていた。最近では彼氏が出来たらしく毎日のように彼氏と帰っている。特に今の所進展は無い。



いつもの道で帰宅していたあなたは、家の近くにある路地裏から女の子の叫び声が聞こえ、慌ててその路地に向かって走っていた。裏路裏は少し暗く前が見にくい状態の中女の子の声がする方へ急いで向かって行った。そこには大勢の大人がいて遠目ではあったが確かに女子が一人しゃがんでいるような光景を目にした。それから5分も経たないうちに警察が数名‥‥ ―目撃者30代女性

人生11年目の夏休み終了の前日、ほとんど優香の件を諦めかけていたその時、新しい進展があった。
いつも通り優香の事を尾行していた私はいつもと違う道を優香が歩いている事に気がついた。いつもとは違う道だと逸れやすい、気を引き締めなければならない。そういえばさっきから気になっている優香が片手に持っている少し大きめな紙袋は、何が入っているのだろうか。そんな疑問を抱きながら尾行していると、お墓が多く建てられているお寺についた、誰かの命日だろうかとおもろげながらに携帯で日付を確認した、あっ!そんな声が心の中で響いただろうか、今日は大切な日だ妹の命日だった、そんな大切な日に‥‥そうかこの場所何か見覚えがあると思ったら、そういう事だったのか優香、そろそろ白状してくれよあんたなでしょ、あのとき見たんだよ一瞬しか顔は見れなかったけど確実に優香の顔だった、夏休みの終わりの前日8月31日今日は妹の命日、お墓の前で花束を持ってどういう心情でお墓参りに来たの、ごめんなさいか、そんなものいらなわよ、あんたが来ていい場所じゃないんだよ!ここは。

私は通信制の学校を卒業して、そのまま就職する事にした、通信制を選んだ理由にはもう一つの理由が私には合った、それは小さい頃からの夢であるキャビンアテンダント(CA)になる事だった、優香の尾行と学校の勉強をしながらも、CAの資格の勉強もしていた、明日CAの最終面接の結果が送られてくる、とても緊張している。突然家の固定電話が鳴り出した、少しビクッとしたが静かに深呼吸をして呼吸を整えた。『もしもし』電話の相手は女性だった、声を聞いた瞬間冷や汗がでた、『何の用ですか?』声の主は優香だった、電話の内容は明日会えないかという用件だった、もしや尾行していたことがバレていたのか?そんなことが頭をよぎったが、直接あの事について話せることなんて今後ないかもしれないと思い、快く承諾した。『明日の11時に〇〇公園』とメモした紙を机に置き私は眠りについた。

私の妹は私が3歳の時に生まれた。生まれてきた時はとても嬉しかった事を覚えている。
とうとう私にも妹ができるんだと当時は喜んでいた、私が小学生に入り、初めてできた友達優香は良くウチの家に遊びにきては妹とよく遊んでくれていた、だんだん妹も大きくなってきて外でも遊ぶようになった、私が小学2年生で妹が5歳の夏あの事件が起こってしまった。いつも通り公園の砂場で遊んでいた私たちは、大きな砂の城を作っていた。優香は習い事があるから16時ごろには帰ってしまった。優香の妹と私の二人だけになってしまったので、砂場ではなくブランコや滑り台いろんな遊びをした。『最後はかくれんぼ』優香の妹はかくれんぼが好きだった、『私が探すから妹ちゃんが隠れてね』『うん!』1、2、3、‥10もういいかい? もういいかい? あれ?声を出したらバレちゃうからねそういう作戦かな? 5時のチャイムが鳴ったがまだ見つけれていない、そのまま一生見つけられず家に帰ってきてしまった。その後警察に連絡して捜索願を申請したが見つからなかった。そこからだ私と優香が喋らなくなったのは、優香は私が妹を殺したと思っているらしい。

集合時間の5分前に約束の場所の公園に着いた。まだ優香は来てなみたいだ、そういえばここあの事件と同じ公園だ。ここの砂場でよく遊んだね、優香と優香の妹と砂をさすりながら私は泣き始めた。『ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい』
『泣きたいのこっちなんだけど』優香が来たみたい、私は涙を腕で拭き取り後ろを振り返った、その瞬間前から優香がすごいスピードで走ってきて『妹を殺したのは、私じゃないよ。あんたでしょ!ゆうか』と叫び出した。あれ?走馬灯?『妹ちゃんいるじゃん
よかった生きてたんだ。』さようなら「嘘つきな優香」と「偽物の私」。

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