自由診療と保険診療②

前回記事をまとめると、
「日本全国で同じ治療が安く受けられる」というメリットは反面
「薄利多売スタイルの治療になりやすい」というデメリットがあるわけです。
しかし、誰でも保険証を持って全国どこの歯医者さんに行っても
とりあえず治療が受けられる訳なのでクオリティを重視しなければ決して悪いシステムではないと思います。

欧米などの先進国の歯科治療、あるいは日本で自由診療のレジン充填という
詰める治療をするとなると
・術前の説明
・麻酔の時間をしっかり確保
・ラバーダムという歯のマスクを装着し可能な限りキレイな環境で処置
・虫歯を丁寧に削る、マイクロスコープやルーペで拡大して確認
・酸処理や接着力を最大限高める操作
・段差がないように形態を整えてピカピカに研磨
・術後の説明と確認・・・・・

など各ステップを丁寧にこなしていくと一回の治療で60分〜90分
かかってしまいます。もしクオリティーを重視して一回の治療でしっかり治して長持ちさせたいという気持ちがあれば自由診療で受けられると良いでしょう。

これはレジン充填だけでなく、セラミックを用いた修復などにも言えるかもしれません。ただし、自由診療はどの歯医者さんでも同じはないので充分な説明と同意
つまりコミュニケーションを取られることをお勧めします。

自由診療はそれぞれの歯科医院ができる精一杯のことをやることに
なるので歯科医院の差が出やすいのです。もちろん保険診療でも
歯の治療は治療なので差がないとは言えませんが自由診療ほどの差は出ません。

さて、次の「何度も通わなくてはいけない」という保険のシステムについて
簡単に解説します。

まず皆さんに馴染みのある「歯石取り」の流れについて。

歯ぐきの検査をいつするか?一回の診察で何本の歯石を取るのか?歯石を取ったあとの虫歯の治療はいつから再開していいのか?
などなど全て国のルールで決められています。

例えば今日は下の歯の歯石を機械で取っただけで終わってしまった。
上の歯はやってくれないのかな?なんて疑問があると思います。

他にも沢山歯石がついているので6回に分けて取ります。今日は右上を取りましたので次回は左上です。といったこともあると思います。

一回で行ったその日に全部とって欲しいと誰でも思いますよね。
しかし、国が決めたルールに逆らえば保険診療はできませんので
どの歯医者さんも守らなくてはいけません。

仮に何年も歯医者さんに行っていなくて、歯石が多量についていてとなった場合は
歯ぐきの検査、歯石取り8回、検査・・・ともう10回の通院回数になってしまいます。

保険を使わずに自由診療で歯石取りをする場合は量がそこまでじゃなければ
一回の通院で終わり、なんて事も可能は可能です。
欧米などでは一日かけて一回で全ての歯の歯石を取るというやり方があり、研究によっては何度も分けるよりも良いというデータもあります。

次に日本人に馴染みのある治療と言えば「歯の根の治療」でしょうか。
一般的には「根管治療」と言い、歯科治療の中でも難易度が高く技術の差が
出やすい分野です。

大変な治療なので一本の歯につき60分〜90分最低でもかかります。
難しい根が曲がったようなケースになればもっとかかってしまうかもしれません。

それを一回20分ぐらいの治療で進めていく訳なので5回ぐらいは必然的に
かかってしまう訳です。根管治療についてはまた別のところで解説していきます。


まとめると、歯石を取る治療をしたり根の治療をしたりしていれば通院回数は
余裕で10回を超えてしまう訳です。一度歯医者にかかると長くかかると言われる
のも納得できますよね。

しかし、これは歯医者さん側はしたくてしてる訳ではなく国のルールで流れや順番
などが細かく決められているためそうせざるを得ない訳です。
普通に考えれば一度に沢山の時間を確保してどんどん治療を進めて早く終えた方が良い訳ですが、保険診療を選べばそういう訳にはいきません。

無理矢理進めても数ヶ月後に保険診療の審査に引っかかってしまいレセプトと
呼ばれるカルテの写みたいなものが返って来てしまいます。

また別の理由もあり、月毎・患者毎に治療の平均点数が出るのですがこれは暗黙の了解で上限が県ごとに決められています。つまり、とある患者さんの治療を
1ヶ月でかなり進めて窓口で支払う金額が何万円にもなってしまうなんて
事がないように治療を分けて分けて進めていかなくてはなりません。

保険のルールで治療がなかなか進まないのに加え、月にできる治療も制限しながらやらなくてはいけない訳です。

働き盛りの世代の方や若い方はあまり日中、しかも平日に休みを取れないと思うので場合によっては保険診療ではなく自由診療を選ぶというのも選択肢に入れて
みると良いかもしれません。

「Time Is Money」という言葉がありますが、時間はお金では買えません。
良いレストランに行って美味しい食事にワインを飲もうとしたら、その時間と経験に対して「お金」という対価を払う訳です。

歯にも同じような事が言えて自分の健康のために歯に時間とお金をかける。
キレイな歯を入れて自信を持つために前歯の治療に時間とお金をかける。
「歯や口」というものに対して価値観が高くなければできないものですが
価値観というものは人生の中で常に変化すると思っています。

かけれる時にかければ良いですし、今の自分には歯や口よりも他のことが優先であればそちらを優先すべきですし、無理にやるものでもないかもしれません。


歯の治療は短期間で集中治療した方が良い場合が多いには事実です。患者さんによっては半日かけて一度に進める方もいます。例えば、下の歯をまとめて、奥歯をまとめてといったように一度に沢山進める事ができるのは自由診療のメリットと言えるでしょう。

[自由診療の特徴について]  続く

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