新しい哲学−2
今回は、新しい哲学−1の内容を、数式で説明していきたいと思います。
まず、これまでの多くの経験と実験により裏付けられ、いまだに反証されていない、つまり客観性が非常に高い熱力学第一法則(エネルギー保存則)からスタートします。この法則は、高校物理から登場し、そこでは簡単に、
ΔU = W + Q ・・・(1)
と書きます。ΔUは注目した系の内部エネルギーの変化、Wは外界が系にした仕事、Qは外界から系が受け取る熱です。言葉で言えば、熱力学第一法則は、「物質の出入りのない系の内部エネルギーの変化の原因は、仕事と熱を系が外界とやり取りすることのみ」ということです。
大学に入って習う熱力学では、全微分を用いて、
dU = PdV + TdS ・・・(1)’
と書きます。Uは内部エネルギー、Pは圧力、Vは体積、Tは温度、Sはエントロピーです。PdVがW、TdSがQです。
さて、(1)’ 式の右辺の2つの項に着目します。第1項の仕事は、P = F/S(シリンダーとピストンを考えた時、Fは外からピストンを押す力、Sはピストンの表面積)、V = SL(Lはピストンの変位)なので、W = PV = FLとなり、仕事 = 力 × 変位、これは力学的仕事の定義そのものです。
次に第2項です。左辺がエネルギーであり、右辺の第1項は仕事であるので、エネルギーや仕事の仲間であることが期待されます。実際、左辺、右辺第1項、第2項、すべてJ(ジュール)という同じ単位を用いています。(ただし、エネルギーは、熱力学でいうところの状態量であり、仕事と熱は移動量である点は異なります。)右辺第1項は変位という空間的変化に対応していますが、変化といえば、空間的変化の他に時間的変化が思い浮かびます。
ここで、要請として、右辺第2項を「時間的仕事」と考えたいと思います。さらに第1項が、圧力 × 体積( = 空間)変化であること、第2項が、温度 × エントロピー変化であることをヒントにして、温度をある時刻における「時間の圧力」、エントロピーを「時間」とすることをセットで要請します。
「時間の圧力」は聞きなれない言葉かと思いますが、「時間」は馴染みのある概念です。エントロピーが時間というのは奇異な感じを受けるかもしれませんが、時間は広い意味での示量変数と考えられ(なぜなら系の空間スケールだけでなく時間スケールをも考えれば、これに比例するからです)、エントロピーもまた示量変数である点では一致しています。そこで、共役な変数として示強変数である「時間の圧力」を導入し、温度に対応させます。
以上の置き換えを行うと、熱力学の第一法則は、(時空間を考慮した)系のエネルギー変化 = 力学的仕事 +「時間的仕事」= 力 × 変位 +「時間の圧力」× 時間と書き換えられます(「時間的仕事」は熱の流入に倣って系になされた仕事を正とします)。(1)’ 式を再掲しますと、
dU = PdV + TdS ・・・(1)’
ただし、Uは内部エネルギー、Pは圧力、Vは体積、Tは時間の圧力、Sは時間です。ところで、(1) 式は、熱力学においては、完全な熱力学関数と言われています。UをSで偏微分するとTが得られ、UをVで偏微分するとPが得られます。以上のことは、数学的形式が同一の(1)’ 式にもあてはまります。
新しい哲学1では、「空間」「時間」「志向性」を所与とし、『意識』、『意志』を定義しました。今度は、上記の(1)’ 式から『意識』、『意志』を定義します。(1)’ 式の右辺第1項は、空間における仕事ですが、ここで圧力Pを『意志』定義します。また、右辺第2項は、時間における仕事ですが、ここで時間の圧力Tを『意識』と定義します。
「志向性」は「焦点化」のことでしたが、数式上はこれは微分(偏微分)を表すと考えます。即ち、新しい哲学1における、
定義1:意志とは、空間への志向性である。
定義2:意識とは、時間への志向性である。
は、
定義1:意志とは、(1)’ 式のV(空間)での偏微分(=P)である。
定義2:意識とは、(1)’ 式のS(時間)での偏微分(=T)である。
と数学的に表現されます。
さらに図示すると以下のようになるかと思います。