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何も無いボク 【オリジナル短編小説】

「ボクはね、ある日、自分が何も無いことを知ったんだ」

それはなぜですか?

「だってね、ボクは他の人と比べて好きな物ってものがなかったんだ、友達だと思える人もいないしね、みんなが好きだって言うアイドルってやつを見てみたさ、でもね、ボクはどうやら歌もダンスも人もなにもかも好きじゃないらしいんだ」

なぜ好きじゃないと思ったのですか?

「心が動かなかったのさ、皆は歌詞が心に刺さるだとか、この歌声がいいとか、アイドルのファンサービス?ってやつにキャーキャー言ってたがボクは何も思わなかったんだ」

それがなぜ、自分が何も無い事だって思ったんですか?

「心が動かないってことは好きじゃない、好きなものがないってことは何も無い、ボクはそう思うんだ、だからボクには何も無い、そう思わないかい?」

…では、なにか継続してやってる事は無いのですか?

「継続?そんなものはないね、ただ生きてるってだけかもね、あぁ、でも絵を描くことはたまにやってるかな」

なぜ絵を?

「ボクには何も無いからね、何も無いから生み出せるものもあるのかもと思ったのさ、結局は誰かの真似事しか出来てないんだけどね」

では、貴方は何も無いわけじゃない

「?」

貴方は絵を描いている、なぜそれを選んだか、それは絵が好きだからではないでしょうか?

「ボクが絵が好き?そんな、ただ気まぐれで選んだだけで…」

でも多くの中から絵を選んだ、生み出すことをしたいなら小説などでも良かったはず、様々な選択肢の中から絵を選んだのは貴方が絵が心の底で絵が好きだったから、そうじゃないですか?

「…まさか、ボクは何も無い筈だ」

そう思い込んでるだけです、貴方は何も無くなんかない、貴方は素敵な人です

「…ふふっ、キミは面白いね、そうかボクにもあったんだね、ありがとう、ボクだけじゃ一生気付けなかったかもしれない、本当に感謝するよ」

お礼を言われるほどではありません、これからの貴方の人生が彩りますように

例え、世界に名を轟かすような人物になれなくとも、自分が好きだったものを知る、それが人生を彩るものになるかもしれない

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